空白の時間にいったい何が? その真実がついに明かされる!『天の花 なでし子物語』

文芸・カルチャー

2018/2/21

『なでし子物語』(伊吹有喜/ポプラ社)
『地の星 なでし子物語』(伊吹有喜/ポプラ社)
『天の花 なでし子物語』(伊吹有喜/ポプラ社)

 自立――顔を上げて生きること。自律――うつくしく生きること。そのふたつの言葉を胸に、生きていく強さをそなえていく人々の成長を描いた「なでし子物語」シリーズ(伊吹有喜/ポプラ社)。待ちに待った最新作、第1作と第2作で描かれなかった空白のときを繋ぐ物語『天の花 なでし子物語』が発売された。

 お屋敷のあととり息子と、使用人の娘。立場はちがえど母に捨てられ、峰生の地で栄える遠藤家のしきたりに縛られ、孤独を抱えていた立海(たつみ:小1)と耀子(小4)が手を取りあいながら前に進もうとする姿を描いた第1作『なでし子物語』。立海の耀子へ向けられる愛情は恋というにはあまりに切実で、繊細な強さを秘めた立海の笑顔は耀子にとって大きな救いだった。永遠に続いてほしいと誰もが願ったふたりの絆。だが2作目『地の星 なでし子物語』で舞台は20年近い時を超え、28歳になった燿子が、40歳の遠藤家当主・龍治と結婚し、子をもうけている姿が描かれる。

 立海は、遠藤家の長男亡きあと、老齢の当主が19歳の愛人に産ませた息子だ。龍治は、その亡き長男の息子にあたる。その彼と、耀子は18歳にして結婚したという。空白の時間に何が起きたのか、読者は気になってたまらないはずだ。その答えは耀子14歳の夏にあった。妻と別居して戻ってきた、26歳の大人な龍治。少しでも耀子に追いつきたくて、焦りを覚えていた10歳の立海。3人が“友だち”として過ごした時間は長くは続かず、“女”へと成長しはじめた耀子に残酷な現実をつきつけ、やがて立海との別れを導いてしまうのである。

 著者の伊吹有喜さんは、『地の星』刊行時にこう語っている。

「4歳の年の差は、10代ではとても大きかった。立海にとっても龍治は憧れの大人だったので、悔しいし腹も立つけれど、彼なら仕方がない、という思いもある。でも納得できない。その思いが炸裂するのが『天の花』なんです」

 本作では耀子14歳の夏に何が起きたのかと同時に、突如遠藤家を出ていった18歳の彼女の今も描かれる。母親のもとへいく、と書き残した耀子。父亡きあと娘をネグレクトし捨てた母のもとへ。立海という救いの光が遠のいても、懸命に生きようとしていた耀子。だがそんな彼女に、母はさらなる絶望を与えるのである。

「大切に思われてるって、どういうことかよくわかりません」。そうこぼした燿子の言葉は強い痛みをもって胸に響く。「助けを求めて断られて、自分の存在が取るに足らないものだってわかるぐらいなら、最初から助けなんて求めないほうがいい。そっちのほうが(略)ずっと好きでいられる」。哀しみの底に落とされた彼女を、救う光は、立海ではなかった。その過程はひどく切なくやるせなさも募るが、本作に描かれるのは決して苦悩ばかりではない。悲しみと絶望には常に、寄り添うように福音が描かれる。それは天から降る幸運ではなく、自分の足で立とうとする人間だけがつかみとれる強さだ。

 地の星、天の花ともなりうるなでし子たちの物語。彼女たちが紡ぎだす生の光を、ぜひとも3作あわせて体感してみてほしい。

文=立花もも