宮崎駿の次にアニメ界を牽引するのは『君の名は。』の新海誠監督? それとも…

マンガ・アニメ

2018/2/28

『「ポスト宮崎駿」論 日本アニメの天才たち(新潮新書)』(長山靖生/新潮社)

 2017年は日本アニメ公開から100年となるアニバーサリーイヤーだった。その100年の中でも日本のアニメを世界に轟かせ、評価を受けた人物といえば、スタジオジブリの宮崎駿であることは間違いない。そんなアニメ界を牽引してきた宮崎駿も今年で77歳。度々引退を宣言し、その都度カムバックを果たしているが、いつ本当に引退するかわからない。

 そんな中、アニメファンの間で議論されるのが「ポスト宮崎駿」の存在。今後、宮崎駿に代わり日本アニメ界を牽引するのは誰なのか。候補となる、現在活躍中のアニメ監督たちにスポットライトを当て、紹介しているのが『「ポスト宮崎駿」論 日本アニメの天才たち(新潮新書)』(長山靖生/新潮社)だ。

 本書では『君の名は。』の新海誠や『新世紀エヴァンゲリオン』の庵野秀明、『攻殻機動隊』の押井守、『サマーウォーズ』の細田守、『借りぐらしのアリエッティ』の米林宏昌といった監督の経歴や作品の特徴などを解説。他にも日本アニメ史を振り返りつつ、宮崎駿がどのような半生を送ってきたのか。そして今後のアニメ制作の課題や技術革新について綴られている。これから本書の内容の一部を紹介したい。

 劇場版長編アニメーションを制作し、国内外で高い評価を受けている。これを「ポスト宮崎駿」の条件とするならば、大ヒットが記憶に新しい『君の名は。』を手掛けた新海誠は間違いなく候補にのぼる。興行収入を見ても250億円を超え、1位『千と千尋の神隠し』(興行収入308億円)に次ぐ邦画の歴代2位となった。これまで、宮崎作品以外に劇場版長編アニメーションで興行収入が100億円を超えたアニメ作品が無かったことからも、歴史的なヒット作品だったことがわかる。

 そもそも、新海誠監督がこれほどまでのヒット作品を生み出すと想像していた人は、新海ファンですら多くなかった。監督自身、『君の名は。』の大ヒットに驚いた、というコメントを残している。私も新海誠監督の名は知っていたが、失礼ながら「知る人ぞ知る」「コアなファンが多い」「繊細で美しい作画」という印象を持っていた。

 著者によると、『君の名は。』のヒットにはいくつかの要因があるという。その一つにスタッフの質の高さがある。ジブリ作品や押井作品、庵野作品で活躍する優秀なアニメーターや人気バンド・RADWIMPSが、監督の細かなこだわりを一つずつ実現したことが作品全体の完成度を高めた。

 さらに初動の観客が若者中心であったため、SNS拡散による広告効果が大きかったこと。満席が続き、需要と供給のバランスが崩れ、需要過多となってしまったことが一層「観たい」気持ちを増幅させたという。

 様々な要因から大ヒットを生み、「ポスト宮崎駿」急先鋒に躍り出た新海監督。次回作が正念場だ。宮崎監督の素晴らしさの一つに、質が高い作品をコンスタントに世に送り出したことが挙げられる。新海監督の次作が『君の名は。』に引けを取らない作品となれば、「ポスト宮崎駿」の座にまた一歩近づくことになるだろう。

 もちろん、監督本人は「ポスト宮崎駿」など考えていないかもしれない。だが、アニメファンにとっては、作品のディテールに目を向けるミクロな視点に加えて、アニメ界全体をマクロな視点で見るのも楽しいものだ。

 本書はもちろん新海監督以外の監督にもスポットライトを当てている。彼らの作品の特徴や考え方にざっくりと触れられる本書は、アニメ入門書としても十分楽しめるはずだ。

文=冴島友貴