「私は一体何者なんだろう…」に答えをくれる大人のためのフレンチコミック
公開日:2018/3/9
“自分を客観視する”というフレーズはよく聞かれるものだが、自分を本当に客観的に見つめ直してみたら、果たしてどんな自己像が見えてくるのだろうか。
本書『エロイーズ 本当のワタシを探して』(ペネロープ・バジュー&ブレ:著、関澄かおる:翻訳/DU BOOKS)は主人公のエロイーズが記憶喪失に陥った場面から始まる。名前や住所など、自分にまつわるすべてのことを忘れてしまったエロイーズは、持っていた荷物を頼りに、自分探しを開始するのだ。記憶を無くしたエロイーズはさまざまな仮説を立てて、自分は一体何者なのかを空想する。「もしかしたら私は、かっこいい女性捜査官だったのかもしれない」「いやいや、本当は素敵なイケメンの外国人彼氏がいたのかもしれない」。そんなエロイーズのユニークな妄想はことごとく打ち砕かれ、徐々に自分はどこにでもいる平凡な女性であったという事実が判明していく。
自分探しの過程で生まれていくエロイーズのこうした空想は、誰しもが子供の頃に抱いたことがあるはずだ。幼い頃は根拠もなく、自分にはなにか特別な才能があるような気がするものだが、大人になるにつれて、自己の限界を勝手に悟ってしまう。こうした限界を設定してしまうのはもしかしたら、自分のことを知ったような気持ちになっているからなのかもしれない。「自分は話し下手だから営業職には向いていない」や「○○さんは自分と価値観が違うから仲良くなれそうにない」といった自己像はすべて、自分自身が勝手に作り上げてきたものなのだ。
“自分は○○な人間だから”という考えはきっと、知らないうちに自分の首を絞め、生きづらさを生みだしている。自分が今まで築き上げてきた過去の経験は、もちろん大切な宝物だ。しかし、「本当の自分が分からない…」と悩んだときには勇気を出して、今まで積み上げてきた自分を捨ててみるのもよいのではないだろうか。私たちはいくつになっても、何者にもなれる存在なのだ。
近年、TwitterやインスタグラムといったSNS上では、複数のアカウントを持っている人も多い。それは、本当の自分に満足できていないからかもしれない。ボタンひとつで何者にもなれるからこそ、人に胸を張って見せられるような本当の自分を探していくことが大切なのではないだろうか。
文=古川諭香
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