未来を作る知恵と方法の道具箱! ビジネスや人生のハードルを乗り越える37のツール

ビジネス

2018/3/14

『問題解決大全』(読書猿/フォレスト出版)

 困難や窮状に直面したとき、それはアイデアだけでは解決できない。確かに新しい考えは我々の思考やものの見方を変え、そのことを通じて行動を変える力を持つ。しかし多くのアイデアは、生まれはしたものの世界に何の影響も与えずにそのまま消えていくのもまた事実。これまでにないアイデアを得るために自身の内なる制約を外して発想を広げたとしても、実現の前に立ちふさがる制約は自分の外側の世界にも数多く存在するためである。

 学生から学者、作家、ビジネスマンまで、幅広い層から絶賛されたロングセラー『アイデア大全』の著者が、上のような理由から新たに手掛けたツール本『問題解決大全』(読書猿/フォレスト出版)を本稿ではご紹介したい。本書は、実用書であると同時に人文書を目指すという姿勢で作られている。充実した具体的なハウツーの提供だけに留まらず、問題解決の歴史を振り返り、その本質を掘り下げ、ルールをつくり社会をつくる人間という生き物がなぜ問題解決を必要とするかという問いにまで答えようとしている。

■従業員の安全眼鏡の着用率が低いことに悩む化学工場の幹部

 本書27番目のツール「ミラクル・クエスチョン」をここにご紹介したい。この問題解決方法の使い方(レシピ)は以下の通りである。

1)問題が完全に解決・解消したところを想像し、その様子をできるだけ詳しく描写する。
2)描写したものの中で、最も簡単で実現しやすそうなものを1つだけ選ぶ。
3)2で選んだものを実現する手段を考え、第1歩を実行する。

 そして本書では、具体例(サンプル)として「伊達男たちの安全眼鏡」という小話が挙げられており、こちらが実にわかりやすい。

 作業中の安全眼鏡の着用が義務付けられていながらも、従業員の安全眼鏡着用率がはかばかしくなかったイタリアの化学工場。何度も対策の会議が行われ、原因が分析され、労働者に対する危険性を説明する研修会が開かれるが、着用率は向上しなかった。

 そんな中、この会社に解決志向アプローチが導入される。長年取り組んできたのに成果が上がらないこの問題に対して、早速幹部はこのアプローチを応用してみることにした。

1)彼らはまず、問題が完全に解決したところを想像してみた。労働者たちが皆、耐薬品性と耐熱性に優れた安全眼鏡をかけて作業をしている様子を思い浮かべた。理想の光景のはずだが、なぜだかしっくりこない。「彼らがかけたがらないのもわかる気がする」と言い出す幹部まで現れる始末。

2)結局、会議で幹部たちが選んだのは、安全眼鏡じゃなくてもいい、とにかく眼鏡の類をかけさせることはできるか、という課題であった。

 ヒント、というよりほとんど解決に等しいものが、問題のない未来を想像したときに幹部の頭に浮かんでいた。イタリアの伊達男たちが誰に命じられるでもなく、職場どころかプライベートですら自発的にかけている眼鏡があるじゃないか。そう、サングラスだ。

 幹部たちはサングラスのカタログを取り寄せ、人気のあるミラーシェード(鏡面反射加工)タイプのサングラスを発見した。

3)幹部たちは、労働者たちの意見を取り入れ、ミラーシェード・タイプの新しい安全眼鏡を開発した。これを労働者たちは大いに気に入り、安全眼鏡着用率は天井に達した。

 本書では上の例のような形で、全37の問題解決方法が解説されている。問題解決の概要「レシピ」とその具体例「サンプル」によってその全体像が把握しやすく、さらにはその解決法に対する掘り下げや著者の考察をまとめた「レビュー」は非常に濃い内容となっている。目の前にある問題に対して具体的なツールを見つけ、さらには問題解決の本質にまで迫ることができる本書は、ビジネスや生活のレベルを向上させること間違いなしだ。

文=K(稲)