1ダースもの猫と暮らしていた猫好き画家による猫画集 東京では展覧会も!

文芸・カルチャー

2018/3/19

『猪熊弦一郎 猫画集 ねこたち』(リトルモア刊)

 世の猫好きたちが猫を愛する理由は何だろう?

 ある時は人を寄せつけない孤高の存在、またある時は気持ちにそっと寄り添ってくれる相棒として、私たちの生活と微妙な距離感を保ち生活している猫たちの魅力は、言葉で表現し尽くせない。
 猫は古代エジプトから狩野派に至るまで、彫刻や絵画などのモチーフとしても多くのアーティストたちに愛され、アート作品として描かれてきた。

■マティスに絵を学んだ昭和の画家が描く、独創的な猫たち

 猪熊弦一郎(いのくま・げんいちろう)(1902~1993年)は、百花繚乱だった昭和期の画壇にあって試行錯誤を繰り返しながら独自の境地を維持し、国内外で活躍した画家。戦前はパリでアンリ・マティスに師事し、戦後は東京、ニューヨーク、ハワイと拠点を変えながら、三越百貨店の包装紙デザインや、JR上野駅の大壁画など、ジャンルの枠を越えて活動を続けた。

 そんな猪熊は、一度に1ダースもの猫を自宅で可愛がっていたという。『猪熊弦一郎 猫画集 ねこたち』(リトルモア)は、猪熊と暮らした猫たちの変化に富む姿を捉えた作品をぎゅっと集めた一冊だ。作品のスタイルは、写実的で繊細なスケッチ、シンプルで大胆な線描、デフォルメされカラフルな油彩画、と実にさまざま。猫好きでなくともそのバリエーションの幅広さと描かれた猫たちのユーモラスな仕草に目を奪われるだろう。

 本書に収められたたくさんの猫たちの絵には、猪熊自身が猫について語った言葉が添えられている。猫のちょっとした習性を知る人にとっては、思わず頷いたり笑みがこぼれたりするようなものばかりだ。

猫は性質が人間でいえば女性の様なもので、何を心で思って居るか、
表情の中に露骨に現わさないから一見いじ悪い動物に見える事があるが、
長く見て居ると精一杯の表現はして居るが、
犬の様に直接的でない為に、仲々むつかしく、解りにくい丈(だけ)である。
それだけ犬よりもデリカシーを持って居るし、強くも感じる。
「美術手帖」1949年11月号

猫は一匹、二匹飼うよりも、
沢山飼つて見る方が其習性が解つて面白く、
一つ一つを特に可愛がらなくとも、
猫同志で結構楽しく生活して居て、
見て居ても、実に美しい。
「造形」1955年3月号

愛しているものをよく絵にかくんです。
愛しているところに美があるからなんです。
「少年朝日」1950年12月号

 本書には、あなたが見たことのある猫、まだ見たことのない新しい魅力、さまざまな感情が何層にも詰められている。ゆったりとページをめくりながら、表情豊かな猫たちのコミカルな姿を楽しんでほしい。

■猫好き画家の素敵な世界観に触れるチャンスが東京で!

 本書に収録されたさまざまな猫画を集めた、注目の展覧会が3月20日から東京・渋谷で開催される。愛猫家・猪熊弦一郎の描いた猫たちに実際に会える貴重なチャンスだ。

展覧会の見どころ
(1)無類の猫好きが描いた数百匹の猫たちが大集合
(2)猪熊弦一郎という画家の奥深い世界に触れるきっかけに
(3)猪熊の出生地・香川で開催された話題の展覧会がパワーアップして東京に

【展覧会の概要】「猪熊弦一郎展 猫たち」

・会期: 2018年3月20日(火)~4月18日(水)会期中無休
・時間: 10:00~18:00 毎週金・土曜日は~21:00(入館は閉館30分前まで)
・会場: Bunkamura ザ・ミュージアム
     東京都渋谷区道玄坂2-24-1(東急百貨店本店隣)

・公式サイト: http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/18_inokuma/