クリープハイプ尾崎世界観「悔しくて震える。」赤裸々日記第2弾『苦汁200%』

エンタメ

2018/4/1

『苦汁200%』(尾崎世界観/文藝春秋)

 才能に溢れる人の日常に触れることほど、刺激的なものはない。大人気ロックバンドの「クリープハイプ」ギター・ボーカルで、小説家の尾崎世界観の赤裸々日記『苦汁200%』(文藝春秋)が発売された。これは、有料メールマガジン「水道橋博士のメルマ旬報」で連載されている尾崎世界観のエッセイの書籍化第2弾だ。

「クリープハイプ」のフロントマンとして美しく切ないハイトーンボイスと文学的な歌詞が高く評価され、初小説『祐介』で話題をさらった尾崎の日記は、言葉選びが巧み。そして、何よりもあまりにも人間臭い。彼の元々のファンであろうと、なかろうと、毎日をもがきながら進む彼の姿には、否応なく惹きつけられることだろう。

7月11日

(前略)作詞をして文章を書いて、夜を過ごした。真夜中3時過ぎ、開け放した窓から、女性の泣き声が聞こえる。こんな時間に男にでも放り出されたんだろうか。まったく酷いことをするもんだ。せめて朝まで待ってやれば良いのに、血も涙も無い野郎だ。と思ったけれど、自分だって変わらないだろう、きっと同じようなことをしてきたんだ。いつか泣かせたあの人の泣き声も、見知らぬ誰かが聞いたはずだ。本当に悲しそうで、やるせない気持ちが部屋に充満して困った。泣いているあの人に良いことがありますように、とか願う前に、自分が泣かせたあの人の幸せを祈れよ。そう思いながら寝た。

8月20日

(前略)居てくれるお客さんを大切にしたいと思ったし、大切にされたいと思った。選んでもらえなかった悔しさと、選んでもらえた幸せを感じた。今日をしっかり覚えておこう。

 毎日、一進一退。急成長したかと思えば、突然の七転八倒。うまくいく日もあれば、結果が伴わない日もある。自分が嫌になってしまう日も、自分で自分を褒めてあげたい日もある。この日記に惹かれてしまうのは、尾崎が日々戦い続けているからだ。彼は日記のなかでどこまでも素直に自分の感情を表す。バンドとしても小説家としても大活躍しているように思えるのに、彼は日々悩み、葛藤し続ける。圧倒的な比喩力と観察眼。自身の感性のするどさを武器に、彼は妥協せずに高みを目指し続ける。その姿は、なんとなく日々を過ごしている我々にとってどれだけまぶしく目にうつることだろう。

5月8日

(前略)悔しくて震える。
でもこっちの方が、会いたくて震えるよりも、性に合ってる。

悔し疲れしてぜえぜえ言ってる。
やってられるか。やってやるよ。

 ファンへの感謝の思いと悔しさ。ステージ上からの生々しい思い。日々の葛藤、鬱憤。決して同じ一日などない。どんな一日も大切にしなければと思えるような、勇気づけられるようなこの作品は、無味乾燥な毎日を過ごすあなたにこそ読んでほしい。

文=アサトーミナミ

<あわせて読む>
クリープハイプ尾崎世界観として、小説家として、一進一退、「葛藤の日々」を描いた美しくも切ないエッセイ集『苦汁100%』