元Google副社長にして、『ポケモンGO』生みの親。今世界中から注目されているジョン・ハンケ氏のこれまで

暮らし

2018/4/19

『ジョン・ハンケ 世界をめぐる冒険』(ジョン・ハンケ/講談社)

 この春から新天地という人も多いだろう。また新しく何かに挑戦しようという人も大勢いらっしゃるのではないか。挑み続ける以上、目の前に苦難は現れる。そんなとき、力強く背中を押してくれるのが『ジョン・ハンケ 世界をめぐる冒険』(ジョン・ハンケ/講談社)だ。

 ジョン・ハンケ氏は、あの「ポケモンGO」を生み出したベンチャー企業「ナイアンティック」の創業者で、今世界がもっとも注目するプログラマーにして、経営者のひとり。彼の初の自伝が、全世界に先駆け、日本で発売された。

 2016年夏の「ポケモンGO」リリースの際には、スマホ片手にポケモンを探し回る人が街に溢れかえり、連日ニュースを賑やかした。現実世界と仮想世界が重なった、いわゆるAR(拡張現実)に「ポケモンGO」で初めて触れたという人も多いと思われる。

 実際にプレイはしていなくとも「ポケモンGO」という名前を聞いたことがない人は、あまりいないのではないか。しかし「ポケモンGO」のベースとなった「Ingress」という位置情報ゲームの存在を知っている人は? さらに「ポケモンGO」「Ingress」を支える位置情報が、あの「Google Earth」であるということを知っている人は、どれほどいるだろうか。「Google Earth」「Ingress」「ポケモンGO」この3つを生み出したのが、ほかでもないジョン・ハンケ氏なのだ。

 世界的大企業・Googleで成功を収めた天才プログラマーにして、世界を熱狂の渦に巻き込んだゲームを生み出したベンチャー企業の経営者。そんなハンケの経歴から、いかにもインドア派で、冷酷そうな男を思い浮かべる人もいると思う。しかし彼を一言で表すならば、「挑戦者」という言葉がふさわしい。

 幼いころから世界を飛び回ることを夢見ていたハンケは、大学卒業後にアメリカ国務省に入省。自身の夢を叶えることとなる。しかしそのなかで自分の本当の望みが「世界に影響を与えること」だと気づいた彼は、小さなゲーム会社に転職。そこからハンケ自身が語る「老いて自分の人生をふりかえったとき、おもしろい話であふれているように生きたい」という挑戦が始まる。

 何かに挑む際、ハンケは必ず自分自身の心に立ち戻る。自分自身と向き合うことが、挑戦の第一歩なのかもしれない。国務省という安定した職を手放す勇気。Google副社長まで上りつめた彼が、その地位を捨ててまでナイアンティックを立ち上げた理由。誰も見たことのないゲームを生み出したがゆえの苦悩。折々でのハンケの心境が丁寧に綴られている。本書はあくまでも自伝であり、自己啓発書の類ではない。何かを乗り越えるための秘策やテクニックは記されていないが、ハンケの考えは私たちが何かを乗り越える際のヒントになることは間違いない。

 ナイアンティックは、「ポケモンGO」につづく作品として「ハリーポッター」シリーズをモチーフとしたゲームの制作を発表している。また日本では10月からフジテレビの新たなアニメ枠「Plus Ultra」で、「Ingress」のTVアニメの放映も予定されており、ますますその動きから目が離せない。

 ナイアンティックとは、ゴールドラッシュの時代に開拓者をサンフランシスコへと運んだ船の名だ。誰も見たことがないものを作り、世界に挑み続けるハンケの言葉は、今を生きるすべての人に力を与えてくれるだろう。

文=籠生堅太(yomina-hare)