「少年探偵団」と「怪盗ルパン」。有栖川有栖、湊かなえ…錚々たる作家陣がオマージュするほどハマる理由とは?

文芸・カルチャー

2018/4/21

『みんなの少年探偵団2』
『みんなの怪盗ルパン』

 子供時代、誰もが一度は心をときめかせる怪人二十面相や怪盗ルパン……と言いたいところだが、最近の小学生はあまりこの辺りを読まなくなっているらしい。単純に子供向けコンテンツの数が増えたせいもあるが、何だか古くさい、話が難しそう(!)という印象があるそうな。

 時の移り変わりといえばそれまでだが、やっぱりもったいないなあ、とかつてときめきまくっていた子供のなれの果ては思う。この2冊に寄稿した作家の皆さんも、きっと同じ気持ちではなかろうか。

 ポプラ文庫から4月3日に発売された『みんなの少年探偵団2』と『みんなの怪盗ルパン』は、江戸川乱歩の「少年探偵団」シリーズとモーリス・ルブランの「怪盗ルパン」シリーズにオマージュを捧げるアンソロジーだ。2014年に乱歩生誕120年を記念して出版された『みんなの少年探偵団』に続く2冊である。

 今回も、書き手にはミステリーやジュブナイルの分野で活躍する錚々たる作家が揃った。

 少年探偵団の方は有栖川有栖、歌野晶午、大崎梢、坂木司、平山夢明。
 怪盗ルパンの方は小林泰三、近藤史恵、藤野恵美、真山仁、湊かなえ。
(敬称略・掲載順)

 間違いなく「ときめいていた側」であろう面々が、原作シリーズに最大限の敬意を表しつつ腕を振るっているのだから、読み物としてのおもしろさはわざわざ言うに及ばない。

 それよりも声を大にして喧伝したいのが、各作品に仕込まれた原作リスペクトあふれる創意工夫の数々だ。

 たとえば、『みんなの怪盗ルパン』の劈頭を飾る小林泰三の「最初の角逐」。この、オマージュ作品のお手本のような傑作は、目から鱗の「怪盗ルパンが史上最大の怪盗になれた理由」を語る。キーになるのは、あの世界一有名な探偵の生涯に残る空白の期間。すべてのピースがきれいに収まっていく快感は、ミステリーの醍醐味としては定番であるけれども、作者が異なるふたつのフィクション世界を見事一本に繋げたその技にはもう興奮、興奮の嵐である。

 一方、『みんなの少年探偵団2』の冒頭作、有栖川有栖の「未来人F」は、そうとは知らずに読んだなら「少年探偵団シリーズにこんな話もあったのね」と勘違いしてもおかしくないほど、果てしなくあの世界を再現している。タイトルはもちろん、クセのある構成や文体――副題の立て方や二字熟語のひらがな表記まで――がとことん「少年探偵団」なのだ。乱歩作品を血肉になるまで読んできたからできる芸当といえるだろう。同時に、現代作家だからこそのパロディにもなっている。伝わってくる熱い乱歩愛には、ただただ感動するしかない。

 他の収録作も、それぞれの作家が己の個性を原典の世界に巧みに忍び込ませ、懐かしくも新しい物語になっている。

 少年探偵団と怪盗ルパン。

このふたつの楽しい「沼」に21世紀の子供たちを引きずり込みたいと願うワルい大人のみなさん。まずは自分が楽しんだ後、原典と本書を両手に布教活動に励んでみてはいかがだろう。タイトル通り、「みんなの」ものにするために。

文=門賀美央子