【京極夏彦特集】寄稿&インタビュー「拝啓、京極夏彦様」/有栖川有栖さん
※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2023年10月号からの転載です。
京極夏彦とはどのような人物なのだろうか。それは京極ワールドを楽しむ私たちにとって、永遠の謎である――! 京極夏彦さんと共に作品を作り上げた方々、またご親交のある作家の皆さまに、京極さんとの思い出や京極作品の魅力について伺いました。今回は有栖川有栖さんです。
姑獲鳥の頃
京極夏彦さん、作家デビュー三〇周年おめでとうございます。 早いものですね。衝撃的なデビュー当時のことはまだよく覚えています。講談社文芸第三出版部の宇山日出臣部長が、「新しい人のすごい作品が出るんです」とにやにやしながら話してくれた表情や声も含めて。ああいう時、編集者さんというのは実にうれしそうな顔をしますね。世界の深遠なる秘密を握っている気分になるのでしょうか。 『姑獲鳥の夏』初版の奥付には一九九四年九月五日とあります。講談社ノベルスは月初の発売で、九月の頭に書店に並んだのではないか、と思うのですが、それはさて措いて。 京極夏彦の広大にして底知れない作品世界についてあれこれ語る紙幅はないし、私が書くから面白いとい…