『名探偵コナン』安室さんの「公安警察」って目暮警部たちと何が違うの?

エンタメ

2018/5/12

『ZERO〈上〉〈中〉〈下〉(幻冬舎文庫)』(麻生幾/幻冬舎)

 興行収入は5年連続で最高記録を達成、前作『から紅の恋歌』は2017年邦画ランキングNo.1を獲得した『名探偵コナン』劇場版シリーズ。その前作を上回る快進撃を続けているのが、劇場版最新作『名探偵コナン ゼロの執行人』だ。

 ヒットの立役者は、なんといってもあの男──喫茶ポアロの店員にして私立探偵、黒ずくめの組織の探り屋、そして公安警察という〈3つの顔〉を持つキャラクター、安室透だろう。『名探偵コナン 安室透セレクション ゼロの推理劇(小学館ジュニア文庫)』(酒井匙:著、青山剛昌:原作・イラスト/小学館)でもいろいろな表情を見せる彼だが、劇場版最新作では、〈3つの顔〉の中でも公安警察としての一面がフィーチャーされている。

 公安警察……日常生活では聞き慣れない言葉だ。そこで「“公安”って何?」「コナンでおなじみの目暮警部たちとは違うの?」という人から、「安室さんって、公安の秘密組織〈ゼロ〉の人なんだよね?」「〈ゼロ〉についてもっと知りたい!」という警察もの玄人まで、たっぷり楽しめるエンターテインメントを紹介したい。圧倒的な取材力に定評のある作家・麻生幾が、公安警察の極秘組織〈ZERO〉の姿を描き出す超大作『ZERO〈上〉〈中〉〈下〉(幻冬舎文庫)』(幻冬舎)だ。

 そもそも日本において“公安警察”とは、警察庁(都道府県の警察組織を監督・指導する)と都道府県警察の公安部門を指して呼ぶ言葉。公共の安全(公安)を脅かす事案、たとえばテロなどに対応するのが仕事だ。その公安警察のトップが警察庁警備局であり、そこに属する秘密組織〈ZERO〉は、「全国公安警察の三分の一を実質的に支配している」という。

「秘匿作業によってその実態が謎に包まれた公安組織の中でも、その存在さえ否定し続けられてきた〈ZERO〉。内部でもその名称すら口にすることが決して許されない組織。封印された歴史の中に秘められ、その歴史を紐解くこと、そして語ること、そのすべてが禁忌とされている」

『ZERO』の主人公、警視庁公安部の捜査官である峰岸は、中国大使館による大規模なスパイ活動の手がかりを得る。ところが、峰岸らの捜査を阻んだのは、公安警察内で絶大な権力を持つ〈ZERO〉だった。“警察の中の警察”とも言える〈ZERO〉のあり方に疑問を感じていた峰岸だが、身近な人に犠牲が出はじめ、〈ZERO〉の指令──〈ウラ(裏)〉の人間として中国の大物スパイに接触する──に従わざるを得なくなり、各国政府や警察、自衛隊など、さまざまな立場の思惑が錯綜する陰謀に呑み込まれていく。

 欺瞞と策略、逃亡、追跡、裏切りと逆転。壮大かつ壮絶な諜報戦に、濃密な人間ドラマが絡む。裏切り者は誰か、憎むべきは、敵は、何なのか。ページをめくる手が止まらず、原稿用紙にして2142枚という大作ながら、長さをまったく感じさせない。緻密に書き込まれたフィクションは、リアリティーを持って立ち上がり、現実との境目がわからなくなってしまう。見事としか言いようがない。

 真実を暴く者VS.正義を貫く者──劇場版『名探偵コナン ゼロの執行人』最新作のキャッチコピーと、コナンの決め台詞「真実はいつもひとつ!」は、最高にクールでスマートだ。それを体現するコナンや安室に、誰もが強い憧れを抱く。一方で、現実の私たちは、彼らのように卓越した能力も、大きなものに抗える力も持たない。世界はままならないことばかりだ。だからこそ、ウラの世界で翻弄される主人公が、泥臭く地を這いながら運命を切り開いていく『ZERO』中の一文が染みる。

「オモテのある現象は常に真実です。しかし、もう一つの真実、それもまた真実なのです。真実とは一つではない。あえて言うなら現実こそ一つなのです」

『ZERO』を読んで劇場版『名探偵コナン ゼロの執行人』を見るもよし、映画を観て『ZERO』を読むもよし。劇場版最速ノベライズ『名探偵コナン ゼロの執行人(小学館ジュニア文庫)』(水稀しま:著、櫻井武晴:脚本、青山剛昌:原作/小学館)で、映画のストーリーをじっくり追うのもいいだろう。公安警察、そして〈ZERO〉にまつわる物語が、いっそう楽しめるに違いない。

文=三田ゆき

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