20周年を迎えた『カウボーイビバップ』を、今こそ観る意味

アニメ・マンガ

2018/5/23

「俺はただ覚めない夢を見ているだけさ」

 舌に染みるほど苦いけれど、かすかに残る甘さ。ビターなタバコの煙の味がするオトナのアニメ。「カウボーイビバップ」は、90年代の萌えアニメ全盛時代に、人々の目を覚まさせた辛口の異色作だった。

 作品の舞台は、星々を宇宙船が行き交う近未来。登場する人物は、いわくありげな過去を持つ賞金稼ぎたち。それだけだと、きらびやかなSF作品に思えるかもしれない。だけど、実際のフィルムを見ると、そんな華やかなイメージとはかけ離れた、シブい作品だということがわかるだろう。

 オンボロの宇宙船に乗った、むさ苦しい中年(に近い)男性たちが、チンジャオロースの肉の有無をめぐって喧嘩を始める。ひとたび地上に降りれば、アジアの古い都市のように多言語で書かれた看板があちこちに張り巡らされた町で、犯罪者たちとしのぎを削る。

「俺は運が良いわけでも、腕が良いわけでもないんだ。気っ風が良いのさ」。

 危険を愛し、窮地に陥っても軽口をたたく減らず口。自分の流儀を貫き、ときには金よりも人情を取る。本作は泥臭い登場人物たちによる、ハードボイルド作品なのである。

 これが実にカッコよかった。主題歌「Tank!」は、菅野よう子によるジャズファンクをベースに、ブラスが高らかにリフを奏でる超名曲。おそらくアニメに興味がある人は、どこかで一度は耳にしたことがあるはずだ。さらに、その菅野が手掛けた劇伴(BGM)は、ブルーズとロック、ファンク、テクノのごった煮。そのアーシーなリズムに乗せて、渡辺信一郎監督(本作がTVシリーズ初監督)のシャープな演出が冴えまくる。実写ドラマでも活躍していた信本敬子の脚本は、オフビートな会話の中にシリアスがにじむ、丁々発止なやり取りが、まるでナイフのように突き刺さる。そんなドラマを、川元利浩をはじめとしたアニメーターが、スタイリッシュな作画でドラマチックに描く。

「死にに行くわけじゃない。俺が本当に生きてるかどうか、確かめに行くんだ」。

 いつも軽口を叩いている、もじゃもじゃ頭のスパイク・スピーゲルは実は犯罪組織から足を洗った「一度死んだ」人間。ヒロインのフェイ・バレンタインは、金遣いが荒くてギャンブル好きだが、実は冷凍睡眠で50年以上眠り、時代に取り残された人物。天才ハッカーのエドは、なんと13歳の性別不明の子ども(実は女の子)。宇宙の事故で壊滅状態になった地球を離れ、居場所をなくした彼らは寄り添いあい、ぶつかり合う。ペット窃盗犯を追うドタバタあり、カジノでの丁々発止の駆け引きあり、サイバーパンクあり、オカルトテイストあり、基本は一話完結でドラマが描かれていく。やがて、スパイクは、残してきた過去と向かい合うことになる。

「動かない時間はいらないわ」

 本放送は暴力表現などの映像規制が入ったうえに、放送枠の都合で全話が放送されないという、不遇の目にあった作品だった。だが、衛星放送などで全話が放送されると急激に高い評価を獲得。国内外からも注目を集め、その後日譚を描いた劇場版『カウボーイビバップ 天国の扉』が制作された。渡辺監督や菅野よう子をはじめとする、メインスタッフはこの作品で注目を浴びるようになり、制作スタッフとアニメーターたちは独立してアニメスタジオ・ボンズを設立したのである。彼らの現在の躍進ぶりは、アニメを少しでもご覧になっている方ならばご存知だろう。

 90年代、タバコはオトナの象徴だった。町にはスモーカーがたくさんいて、真っ白な煙を噴き上げていた。あれから20年が経った。タバコは高額になり、嫌煙権が一般的になり、スモーカーの肩身は狭くなった。いまやタバコは時代遅れの象徴になりつつある。

 町の中で賞金首を追いかけながらタバコの煙をくゆらせるスパイクたちは、現代の町をどう思うだろうか。20年前よりも窮屈に感じるんじゃないだろうか。

 アニメ作品がたくさん作られている今だからこそ、今活躍するクリエイターたちの初期衝動が詰まった原点をぜひ、注目していただきたい。

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『カウボーイビバップ』放送20周年のメモリアルイヤーに、アニメやゲーム作品のコンセプトを元にした内装やキャラクターをモチーフにしたオリジナルメニューが楽める飲食店「アニメイトカフェ」が本作とコラボレーションすることが決定した。

 期間は2018年5月15日から6月10日まで。会場はグッドスマイル×アニメイトカフェ秋葉原(千代田区外神田1-7-6)・大阪日本橋(浪速区日本橋4-15-17)の2店舗となっている。オリジナルグッズとしては全16種類の「トレーディングポートレート 封筒入り」(500円)が用意されているほか、メニューには、ビバップ号ではおなじみの……「金が無い時の“チンジャオロース“」(700円)が登場の予定。

「ジェットさんよ……肉がないチンジャオロースはチンジャオロースと言わねえんじゃねえかなあ」と店員さんにくれぐれも絡まないようにしていただきたい。「最高の調味料さ」だからね(笑)。(なお、お肉が足りない方には+300円で豚肉追加上乗せができるとか)。ぜひとも、会場で「See you next cowboy!」

(C)SUNRISE