笑えて泣ける、衝撃の実話! 行方不明の親友を探しに海外へ渡った男の大冒険

ライフスタイル

2018/5/26

『行商人に憧れて、ロバとモロッコを1000km歩いた男の冒険』(春間豪太郎/ベストセラーズ)

 海外を訪れると、心躍るようなワクワクに胸がときめく。どんな街が広がっていて、どんな人がいて、どんな生活を送っているのだろう。目に入るもの全てが新鮮で、なんだかファンタジーの主人公になって冒険している気分になる。あの得も言われぬ高揚感は、見慣れた街では味わえない格別の瞬間だ。

『行商人に憧れて、ロバとモロッコを1000km歩いた男の冒険』(春間豪太郎/ベストセラーズ)の著者である春間豪太郎さんも、そのワクワクに魅了された一人だ。19歳の頃、行方不明の親友を探しに一人で訪れたフィリピンでの体験が忘れられず、大人になった今では冒険家として活動している。

 本書は、そんな春間さんのハチャメチャな体験談を1冊の冒険譚としてまとめたリアルRPG日記だ。

■エジプトでラクダ飼いの見習いになったら死にかけた話

 行方不明の親友を探しにフィリピンを訪ねる――そのときの体験が冒険家としての第一歩となった春間さんは、それから5年の間いくつもの国を訪れ様々な体験をしていた。それでも飽き足らずに、今度は「エジプトでラクダと一緒に灼熱の砂漠を歩こう!」と考えた。

 常人にはない思想と並外れた行動力でさっそくエジプトにやってきた春間さん。「日本人宿」なる日本人が集まって現地の情報収集をする宿でラクダと一緒に砂漠を歩く方法を探したり、ラクダ飼いを紹介してくれたエジプト人(男)にイケない意味で襲われそうになったり、紆余曲折を経て、ある街にたどりつく。砂漠地帯特有の「オアシス都市」、ダクラ・オアシスだ。

 その街でラクダ飼いの男サリーマンと出会えたのだが、「エジプト軍が砂漠を閉鎖しているので、ラクダと一緒に歩くと捕まってしまう」という悪いニュースを手にしてしまう。ここまできてそんな……。普通ならばここで冒険を諦めるところだが、春間さんは違った。今はできなくても、いつかはラクダと一緒に灼熱の砂漠を歩きたい。ならば今できることは1つ。そのときに備えて能力を得ること。

「サリーマン、俺を雇ってほしい」

 というわけで、春間さんはラクダ飼いの見習いになった。……いやいや、すごいストーリーだな。本書では、ファンタジーとしか思えない展開があっさりと書かれているので、きっと何度も読み返すだろう。冒険家という人々は、私たちとは別の異世界で生きているのかもしれない。

 このあと、不慣れな灼熱の大地でラクダの世話をするという、過酷というべきか無謀というべきか、その模様がつづられている。これだけでも「おいおい、この人マジか」と目を剝いてしまうが、この冒険譚はこれだけじゃなかった。ラクダ飼いの見習いになって3週間後のことだ。

 さすがにムチャをしすぎたのか、とうとう春間さんは熱を出してしまった。体感的に38度はある。サリーマンに相談すると、「砂漠の木陰で休んだらどうだ?」と言う。「村の決まりで君を一人で家に置いておくことができず、村の外れの木陰(砂漠)で休むしかない。12時になったら知り合いの猟師が迎えてに来て、家まで連れて行く」というのだ。悪い想像しかできないが、渋々それを承諾して砂漠の木陰で休むことになった。

 湿度が低くて温度の高い砂漠では、影のある場所でも非常に暑い。順調に体調が悪化する春間さん。意識がもうろうとし、気を失ったように寝て、目覚めると……なんとサリーマンが消えていた。ひとりぼっちになってしまったのだ。そして肝心の猟師が一向に現れない。もう限界だ。熱中症特有の「体が動かない上に、暑いのに汗がまったく出ない」という恐ろしい症状が出始めた頃、16時過ぎになって例の猟師が迎えに来た。半分死にかけの状態で春間さんは帰宅した。

 だが、本当に死にかけたエピソードはここからだった。サリーマンのアホすぎる民間療法で体調がさらに悪化し、街のヤブすぎる医者の診察で、春間さんはいよいよ瀕死の目に遭う。「やっぱり先進国以外の地域は恐ろしい」と寒気すら走るその模様は、ぜひ本書で確かめてほしい。

■PRGゲームの仲間探しを連想させる相棒との出会い

 ちなみに本書では、このエジプトの冒険譚は「前菜」みたいなものだ。それから1年後のこと、この冒険にまったく懲りてなかった春間さんは、とうとう本題の冒険を始める。ロバを連れてモロッコを横断しようというのだ。なぜそんな旅をしたくなったのか、春間さんは2ページ以上使って述べているが、この本を読んだ私には1行も理解できなかった。ここにきて冒険家として生きる人々の末恐ろしさを感じる。

 さっそくモロッコに到着した春間さんは、まず相棒となるロバを探し出す。そして出会ったのが5頭の相棒候補だった。1匹目は、体が大きくて臆病かつ攻撃的で人間にトラウマを抱えたロバ。2匹目は、逃げたがりで暴れがちで気性の荒いロバ。3匹目は、小柄で足から血が出ているロバ。4匹目は、少し小柄で人に愛されて育った馬力十分なロバ。5匹目が、大きくて馬力十分で歩き方が少し変なロバ。

 まるでRPGゲームの仲間探しを連想させる展開に、奇妙なワクワク感を覚えてしまう。この候補たちから1匹の相棒を選び出した春間さんは、ついに1000kmの一歩目を踏み出すことになる。だが、案の定というべきか、このロバとの旅はたくさんの出会いと奇妙な体験の連続にあいまみれていた。心躍るようなドキドキの冒険が待っていたのだ。

 大人になってしまうと、世界を知った分だけ何かにワクワクする感覚を失ってしまう。冒険家とは、そんな私たちの日常にちょっぴり刺激をくれる職業だ。春間さんも冒険家の名に相応しい刺激を本書に記しているので、日常に飽きてしまった人は、ぜひこの冒険譚でワクドキのひとときを過ごしてほしい。

文=いのうえゆきひろ