その関係は愛か、それとも執着か? 編集者×マンガ家のちょっぴりハードなBL『キミがウソをついた』

アニメ・マンガ

2018/5/27

『キミがウソをついた』(三ツ矢凡人/白泉社)

 嫉妬とは、愛の保証への要求である。とはロシアの思想家・トルストイの言葉だが、独占欲と嫉妬心の強い人間にどれだけ言葉で保証しても満足するわけがなく、満足するには、愛する人の世界から自分以外の人間を消してしまうよりほかはない。見るべきものが自分しかなければ、よそに行ってしまう心配はないのだから。……と、ふつうなら妄想でとどめそうな欲望を実践してしまった男と幼なじみの恋を描いたのが『キミがウソをついた』(三ツ矢凡人/白泉社)。閉ざされた世界で繰り広げられる、なかなかいい歪みっぷりのBL作品である。

 シャッターがおろされ、テレビも新聞もなく、閉ざされたマンションの一室でマンガを描き続ける絃。ときどき訪れる担当編集者であり幼なじみの悠真だけが外から差し込む光だ。アンケート結果はいつも最下位。だけど悠真がマンガを読んでくれるから、そのためだけに描き続ける。そうして仕事が終われば、激しく求めあい、心もからだも満たされる。悠真だけが存在する世界で、絃は彼に支配され続ける。

 だが実は、絃のマンガはアニメ化決定するほどの大ヒット。子供たちはみんな胸を躍らせながら続きを待つ。絃に会いたいと望む編集者はごまんといるし、彼を愛し求めているのはなにも悠真だけではないのだと、1話の終わりで明かされる。疑いをかけらももたず、悠真だけを慕い続ける絃。はっきり言って、歪んでいる。だって要するに、監禁である。常識的に考えて許されることではないのだが、なぜだろう、ふたりの関係を知れば知るほど、不器用に愛しあうふたりが愛おしくて、その歪んだ愛情表現にぞくぞくしてしまう。

 愛情に飢えていた絃の、才能をたったひとり見出してくれた悠真。変わり者扱いされ教室でも浮いていた悠真の言葉に、耳を傾けてくれた絃。それぞれ孤独を抱えていたふたりにとって、“自分だけを見てくれる”互いの存在は何より得がたいものだった。だから悠真は、絃の世界を徹底的に管理するのだ。よそ見する隙など生まれぬように。そしてなにも知らず無邪気そのものに見える絃も、また。

 悠真に嫉妬する同僚の本田が、絃を引き抜こうと接触をはかったことで、“ウソ”に気づいてしまった絃。外の世界に触れた彼は、支配から抜け出すのだろうか。それとも――。

 ほの暗い欲望と執着にまみれたふたりの関係。その行き着く先を見届けたくなる、ちょっぴりハードな物語である。

文=立花もも