福田氏が提言! 日本がワールドカップで勝つために必要なこと

スポーツ・科学

2018/6/18

 ロシアワールドカップ前、最後の強化試合となったパラグアイ戦で、日本代表が4-2で勝った。大会2カ月前という土壇場の代表監督交代劇で、かつてないほどトーンダウンしていた中、にわかに希望の光が差し込んだ。

 日本代表がワールドカップに出場するのは、これが6大会連続6度目。にもかかわらず、これほど直前までトーンダウンしたワールドカップはなかった。なにせ、日本代表が国際大会で結果を出せない日々が続き、ついには日本をワールドカップ進出に導いたハリルホジッチ監督を直前に電撃解任。西野監督が就任し、なおも無得点無勝利で3つの強化試合を終えようとしていたのだから。

 西野ジャパンは3戦目、4得点を挙げて格上に勝利。開幕寸前にムードはがらりと変わった。そして、ワールドカップは開幕する。何と言っても、世界中のトップ選手が、国の威信をかけて戦う4年に一度のサッカーの“祭典”だ。日本はもちろんのこと、世界で語り継がれるであろうプレーやマッチを楽しみに目撃したい。

 クリスティアーノ・ロナウドやリオネル・メッシ、ネイマールの特集から、出場32カ国の徹底分析、グループステージの展望から、日本代表の解説や提言まで、ぎっしり詰まった『ロシアワールドカップ観戦ガイド 直前版』(TAC出版ワールドカップPJ:編著/TAC出版)が発売された。同書を傍らにゲームを観戦すれば、大会を深く広く楽しめるだろう。

『ロシアワールドカップ観戦ガイド 直前版』(TAC出版ワールドカップPJ:編著/TAC出版)

 同書でも、高い見識で日本代表の見通しを語っている元日本代表FWの福田正博氏が、刊行記念にトークショーを行い、監督交代劇から組織論、チームのカギや奇策まで、縦横無尽かつユーモアたっぷりに語り、観客を魅了した。その内容を一部お伝えしたい。

■ハリル解任に“基本的に”賛成。その問題とは

「しかし、コミュニケーション不足ってねえ…」。

 ワールドカップがトーンダウンしたままだった6月初めのこと。紀伊國屋本店で福田氏は、サッカー解説の裏話でにわかに場内を温めると、すぐさまハリルホジッチ監督の解任劇についてこう“ジャブ”を放った。一瞬虚をつかれた観客はドッと笑うと、本当だ、同意だとばかりに、うなずく。

 日本サッカー協会の田嶋幸三会長が記者会見で明かした解任理由のことだ。福田氏は、「そりゃあ、結果が出なかったら、コミュニケーションがうまく行くものも行かない」と一蹴。結果が出て初めて、信頼関係が生まれ、うまく回るものだから「理由」にならないというのだ。

 その一方で、「ハリル解任については基本的に賛成」と断言する。もっと前にタイミングがあったはずなので、時期としては「最悪」と前置きしながら、それまでも疑念に思っていたことを明かす。

「彼(ハリル氏)の言うことは、日本人にないところを改善していくことだったでしょ。例えば、デュエル(1対1の攻防)もそう。日本人が苦手だから高めると。でも、それを全面に出して、ストロングポイントにして戦っていくことに僕は賛成ではない。日本人がそれで世界と戦えるのかと。もっと日本人の持っているいいところを出していくアプローチの仕方をしてくれればいいのに、そうではないように感じたし、そうも見えない、一向に見えてこなかった」と語る。

■「若い選手は“アクセル”でベテランは“ブレーキ”」。組織論としてのサプライズやバランス

 西野監督の就任劇については、「経験と信頼と実績がある。どっかの企業のセールストークみたいだけれど」と一定の評価をしながらも、西野監督が就任した時から「無風」で「サプライズがない」と落胆も隠さない。(ただし、パラグアイ戦後は『驚いた』と明かしているので悪しからず)

 サプライズは組織論として必要なのだという。「長くやってると、どうしてもマンネリ化してくる。そうするとチームは成長しなくなるんです。だから、最後のタイミングでもう一度チームに刺激を与えたい。波紋をわざと与えて、そこから新しい力を引き出して、チームをもう1つ大きくしていく。サプライズにはそういう狙いがある」と福田氏。

 それを実行したのが、8年前の岡田ジャパンだ。当時、岡田監督は大会直前に中村俊輔を外し、本田圭佑を1トップに据えた。メディアから批判が止まらない状況下で、チームを蘇らせることに成功すると、見事ベスト16入りを果たした。今、この時と似ているという声もある一方で、西野ジャパンでは本田圭佑、香川真司、岡崎慎司らベテランが再び帰ってきたことで、「おっさんジャパン」「忖度ジャパン」とも呼ばれている。

 福田氏は擁護しながら言う。「実際はリオ世代もたくさん入っているのだけれど、中島翔哉を外して青山敏弘を入れたのは時計の針を戻したイメージを植え付けたよね」「中島、久保(建英)、堂安(律)あたりは入れてほしかった」と若くギラギラした選手が少ないことを指摘する。

「チームには、20代前半もしくは10代の若い選手が2割、一番働ける20代真ん中の選手が6割ぐらい。で、経験のある選手を2割。このぐらいのバランスがいいと言われている。というのも、若い選手はまだ成功してないから、ものすごく野心がある。車でいうとアクセル。一方で経験のある選手は、いろんな経験してるから、いろんな状況でいろんな判断ができる。でも経験を多く積んでるので慎重になる。だから安定感は生まれるけれど勢いはない。ブレーキになる。だから、経験のある選手ばかりになるとチームが前に進まなくなるんですね」。

「組織全体として年齢バランスがすごく大事。怖さを知らない野心のある若い選手は、チームのエネルギーになるから必要なんです。もちろん若い選手ばかりになると暴走して事故を起こしてしまう。そういう部分で言うと、(西野ジャパンは)経験の多い選手が若干多い。勢いを感じない。アクセルを踏む選手がいないように感じる」。

 8年前に“アクセル”全開だった本田は、今は“ブレーキ”にもなり得るベテラン選手になっている。

■うまい選手ばかりでチームは強くならない。ベンチと奇策の重要性

 同書でも、「サッカーは他のどのスポーツよりもジャイアントキリングが起こりやすい」と前置きする福田氏は、チーム23人で戦う上で、先発レギュラーではない12番目以降の選手のあり方と、奇策の重要性も力説する。

「そもそも代表選手は、サッカーが“うまい”順に選んだら失敗しますからね。なぜかっていうと、代表選手は小さい時からうまい。うまいってことは、ベンチで控えにいることに慣れてない。だからうまい選手をベンチにおいておくと、不満が出たり、ベンチの振る舞いができない。するとそれは、チームの足を引っ張ることになるんです。12番目以降の選手は、日本で一番いい12番目、13番目なら日本一の13番目の選手を選ばないといけない。そうでないと、組織できない。ここで競争はいらないし、そんなことしたらコンディションが整わなくなりますから」。

 短期決戦のワールドカップでは、それぞれに求められた役割がある。ベンチでそうした振る舞いができない選手は、能力が高くても外さないといけないのだという。また、ベンチでは若い選手と経験のある選手をともに置いておくのがベストなのだという。

「あとは、オシムさんも言ってたけれど、ジョーカーも重要。流れは、システムで変えるか、人で変えるか。システムに加えて、交代で切るカードは流れを変えるジョーカーのような選手が必要」と語る。

「だけど、気になるのは、“うまい”選手が多いよね。全員が80パーセントぐらい何でもやれる。長いシーズンを戦うにはいいけれど、短期決戦はどんどんカードを切りたい。相手が驚くようなカードを切りたい」と指摘。守備でも攻撃でも、試合の流れを変えられるジョーカーとして、スピードがあってピッチを駆け回る永井謙佑のような存在がほしいと加える。

 あとは奇策だ。「舞の海が小錦を相手に立ち合いから、正々堂々がっぷり四つで行っても勝てない。相手は、横綱・大関で、こっちは前頭の下の方で小兵。猫騙ししないと。ワールドカップはまさにそういう状況。逆に言えば、そういう奇策があれば、十分相手の足を引っ張ることが可能だと思う」。

 8年前の岡田監督は、情報戦に徹して、1週間前にシステムを変えたと福田氏。格上のチームにジャイアントキリングを起こすには、それ相応の準備と秘策が不可欠でもある。果たして、パラグアイ戦のようなサプライズはあるのか。ジョーカーや猫騙しはあるのか。情報は日に日に増えるばかりだが、迷った時にも同書で“立ち位置”を確認しながら、1カ月続くワールドカップを楽しみたい。

文=松山ようこ