「お金は貯めれば貯めるほど“貧しく”なる」 日本人が抱えるお金への不安を、池上彰が徹底解説!

暮らし

2018/7/5

「貯金は少しあるが、まだ足りない」
「老後のために3000万円は貯金しておきたい」
「物価はどんどん高くなるのに、給料は全く上がらないから、なかなか貯金ができない」
 このような思考の持ち主は、結果的に豊かな生活を送ることはできません。

 豊富な知識と鋭い取材力に基づいたわかりやすい解説に定評がある、経済ジャーナリスト池上彰氏の新刊『池上彰が「結婚」「お金」「仕事」についての疑問に答えます!』が2018年6月21日(木)に発売されました。本書はTBS系列で放送された『池上彰と“女子会”』を、未放送分も含めて書籍化したもの。単発の、しかも女性をターゲットにした深夜番組にも関わらず、男性視聴者からも多くの反響があったといいます。「生まれて初めて女子会に参加しました」と笑う池上氏が、女子会を通じて見えた、「貯金」についての理想と現実のギャップについて教えてもらいました。

『TBSテレビ「池上彰と“女子会”」池上彰が「結婚」「お金」「仕事」の悩みに答えます!』TBSテレビ/KADOKAWA

 本書の軸となっているのが、番組で調査した、500人の女性の悩みや疑問です。
 女子会で彼女たちの話を聞いているうちに、女性が、というよりほとんどの日本人が、貯金に勤しんでいる、その根底には“自分さえよければいい”という考えがあると感じました。だから貯金額に関係なくみんなが不安を感じているし、世の中のためにもなっていません。
 もし金銭面での不安があるなら、お金を貯めるのではなく、実は使うことがポイントです。

◎実は、日本人は「貯めすぎ」

 2016年の総務省家計調査報告によると、一世帯(2人以上)あたりの平均貯金額は約1820万円です。さらに2016年の遺産相続額は、現金だけで平均2073万円(Fidelity調べ)。つまり、お金を貯めていても、使うことなく亡くなる方も多いのが事実です。

 この遺産相続が代々続いていくと、どうなるでしょう。銀行口座やタンスで使われることなく眠っている預金ばかりが増え、必要なところにお金が回ってこない事態に陥ります。今は老若男女問わず、節約をして貯金をしていますよね。実は、日本国民がお金をあまり使わないことが、日本経済の景気がなかなか上向きにならない原因の一つとなっています。

◎「貯めすぎ」なのに、常に貯金への不安を抱えているのはなぜか

 戦後、日本はとても貧しい時代がありました。何とか復興しなければならないのに、その軍資金さえありませんでした。そこで政府はまず、すっからかんの銀行にお金を集めるべく、国民に貯金を促しました。「お金が手に入ったら、貯金をする」と金銭意識を改革していったことによって、日本は経済大国と言われるまでに成長したのですから、戦後の復興のためにはとても大切なことでした。

 その貯金の習慣は、子どもから孫へと伝わり、現代にもしっかり受け継がれてきました。しかし、時代が変わった今、貯金はもはや過去の金銭感覚です。「自分の老後が心配だから」「自分さえお金を持っていればいい」と思ってお金を使わないでいると、結果的に社会にお金が回らない悪循環に陥ります。

 実は、日本の大企業にもその古い考えが根深く残っています。「景気は回復傾向にある」と政府が主張するわりに、国民には実感がありません。なぜかと言うと、大企業にお金が溜まっているからです。企業も不安なので、お金を使いたがらないのですね。まずは企業が積極的に使うことで、国民も景気の回復を実感するはずです。

◎お金を払うという行為は、経済における「投票行動」

 あなたが使ったお金は、誰かの収入になります。国民みんながお金を使うと、世の中に回るお金が増えて景気が良くなり、みんなの給料が上がります。それに従って国の税金収入も上がりますから、医療、年金、教育など社会保障制度が充実します。その結果、例え貯金が少なくても老後は安心して暮らせる社会になるため、ますますお金を惜しまなくなります。これが理想的な経済サイクルです。

 お金を使うときに大切になってくるのが「何にどう使うか」という経済観念です。
 選挙で投票するときは、応援したい候補者に投票しますね。買い物も同じで、応援したいと思えるお店やブランドにお金を払うのです。すると結果的に、不良企業は淘汰され、優良企業だけが残ります。優良企業にたくさんのお金が回ってくれば、製品のさらなる品質向上に努めることができ、利益はますます増加するでしょう。

◎使うお金は「貯める」のではなく「多く稼ぐ」

 ここまで読んで、「とは言え、予算は限られている」と思った人も多いかもしれません。
 しかし、これからは節約してお金を貯めるよりも、副業で多く稼ぐという考え方が主流になっていくはずです。働き方改革の一環として、副業を認める企業も増加傾向にありますし、自分の特技を生かして副業を始める人も増えてきています。自分は社会のために何ができるかを考えれば、幼い子をもつママでも、高齢者でも、手軽にできる副業はたくさんありそうです。
 今、将来が不安で5万円を貯金しようとしているのなら、自力で5万円を稼ぎ、自分と社会のために使ってみてください。そうすれば必ず、あなたの生活は豊かになっていくはずです。