食べちゃいたいくらい大事!? 「おともだち」について親子で考える絵本

文芸・カルチャー

2018/7/11

「おともだち」ってなに? なんのためにいるの? 子どもと一緒に「おともだち」について考えるきっかけになる、絵本2冊を紹介します。

■月にいるうさぎは一人ぼっちなの?

『うさぎさん つきからとびだす』(ジーン・キム/潮出版社)

『うさぎさん つきからとびだす』(ジーン・キム/潮出版社)は、「月にはうさぎがいて、まあるい月が見えたら願いごとをする」というおとぎ話をもとに、「じゃあ、月にいるうさぎはどんな願いごとをするんだろう」という逆の発想から紡ぎ出された物語です。

 月にいるうさぎのもとには、子どもたちの願いが書かれた、たくさんの紙飛行機が届けられます。うさぎはその紙飛行機をお星様に変えて空いっぱいに散りばめます。その描写は、誰かに話したくなるような美しさ。漫画のようにコマが区切られたページもあって、うさぎの感情の変化がアニメーションのように見て取れます。

 あるとき、うさぎは思い立って地球に降り立ち、たくさんのともだちに出会います。それからは、何をするにも、どこに行くにも、ともだちと一緒。微笑ましい反面、切なくなってしまいます。うさぎはいずれ月に帰らなければいけないのですから。楽しい時間をたっぷり過ごした後、別れはつらいはずなのに、うさぎが月に戻れるようにお手伝いをするともだち。そして、月に戻ったうさぎのもとに届けられた贈り物とは――。

 私たちから見ると、月のうさぎは一人ぼっちに見えますが、じつは大切なともだちがたくさんいる、という夢のあるお話。大切な人との思い出は簡単に消えるものではありません。その人のことを思って行動したことや、その人が自分を思って掛けてくれた言葉、それらが多ければ多いほど、思い出は深く心に刻み込まれます。大人にとっても、大切な人のことを思い出させてくれる一冊です。

■食べちゃいたいほど大好き?

『おともだち たべちゃった』(ハイディ・マッキノン/潮出版社)

『おともだち たべちゃった』(潮出版社)には、モンスターが登場します。けれど、モンスターが何者なのか、その場所がどこなのか、さっぱり描かれていません。わかることといえば、モンスターはたった一人のおともだちを食べてしまった、ということだけ。代わりのおともだちを探そうと、他のモンスターに声をかけますが、自分より大きすぎたり、足が早すぎたり、なかなかうまくいきません。理由もなく断られることもあります。あるとき、ついに新しいおともだちが現れました。でも、手をつないだ次の瞬間……。

 モンスターはなぜおともだちを食べてしまったのでしょうか? 「いいやつだった」と後悔するなら、食べなきゃよかったのに。モンスターだからおともだちが美味しそうに見えたのでしょうか。それとも、「食べちゃいたいほど好き」という愛情の裏返し? だいたい、ともだちの基準ってなんでしょう。そんな疑問さえ浮かんできます。

 オーストラリアのイラストレーター、ハイディ・マッキノンによる絵は、もしかしたらこんな場所が宇宙のどこかにあるのかも、と空想してしまう独特な世界観。もしそうだとしたら、今まさに、モンスターがおともだちを食べているかもしれません。余白の部分で想像を膨らませるのが楽しい絵本です。

文=吉田有希