教養は1日1ページの知識から! ——『1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養』
公開日:2018/7/23
最近多くのビジネスパーソンに注目される「総合的な知の力」、これを実際に身につけるとなるとなかなか難しい。学ぶことの根底にあるのは知的好奇心だが、さまざまな分野の学問が発展した現代においては、何に興味をもっていいのかわからないということが往々にして起こるからだ。そういった場合に必要なのが興味をもちはじめるきっかけだが、本稿ではそれにふさわしい書籍を見つけたのでみなさんに紹介したい。
『1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365』(デイヴィッド・S・キダー、ノア・D・オッペンハイム:著、小林朋則:訳/文響社)は、1年をかけて歴史・文学・視覚芸術・科学・音楽・哲学・宗教といった幅広い分野の知識にふれるための書籍で、教養を身につけるための足がかりにはうってつけだ。
本稿では、以下本書に掲載されている「知の断片」をみなさんにお見せしよう。
■第134日目〈歴史〉——ウェストファリア条約
この条約を耳にしたことがないという方は少ないのではないだろうか。とくに高校生のときに「世界史」を選択した方なら誰でも知っている条約だ。ところが、受験勉強に忙しかったであろう高校在学中は、教科書で太字になっているこの条約の名前をひたすら覚えるだけで、その内容を理解していなかった人も少なくないだろう。
この条約は、それをもって近代主権国家体制が確立した非常に重要な条約である。それまで宗教を理由に対立・他国への介入をくりかえしていたヨーロッパ諸国が、宗教をめぐって戦争をするのは無意味なことだと気づいたのである。そして宗教だけではなく一国の政治体制や外交政策を決めるのはその国の自由であるとされたことが「近代主権国家体制の確立」の意味である。
この条約の中身をきちんと理解することで、みなさんはいくつかの疑問を抱かれるはずだ。たとえば、「宗教を理由に戦争をすることが愚かなことだと決まったはずなのに、数年前にISIS(イスラム国)が台頭してきたのはなぜだろう?」とか、「政治体制や外交政策への介入は先進国間では戦争という形では見られなくなったものの、経済(殊に貿易)を通じた主権国家どうしの外交政策への介入はまだまだ残っているのでは?」などである。こうした疑問を抱いたなら、高校世界史の参考書や関連する新書などに目を通し、さらに深いところまで学んでみるのもよいだろう。
■第146日目〈哲学〉——時間
「ああ、最近は仕事が忙しくて休む“時間”がないなぁ」——いつの時代でもよく聞かれるいたって普通のセリフだ。ここでみなさんに立ち止まって考えてほしいのだが、“時間”とはいったい何だろうか。このセリフでいう“時間”には「用事がなくて自由なとき。ヒマ」という意味があるが、文脈によってはほかにもさまざまな意味をもちうる。
そんな“時間”の本質を理解しようと、アリストテレス以降の哲学者たちは各々思索をめぐらせてきた。17世紀の哲学者であるライプニッツは、時間とはできごとの前後関係を整理するための手段にすぎないと述べたという。また、18世紀の哲学者のカントは、時間とはわたしたちが経験したものごとを整理するための方法にすぎないと考えていた。広く一般のできごとか経験したできごとに限るのかという差こそあれ、双方ともに“時間”とはものごとの整理のための方法論であると位置づけている。
多少無理のある話になるのかもしれないが、日ごろから「忙しい」とか「時間がない」といった言葉が口癖になっている人の中には、時間を用いたものごとの整理が苦手な人がいるのかもしれない。
“時間”に限らず、過去に議論されてきた哲学的な話題を、自身の考えを形成する際に用いると、新たな思考の端緒となるというメリットもあるのかもしれない。
本稿では、なるべくみなさんが興味をもてそうな話題を扱ったつもりだが、それでもおもしろくなかったと思う人もいるかもしれない。しかし、本書には360以上の「知識のかけら」が詰まっている。本稿で紹介したものに興味をもてなかった方にもぜひ読んでいただきたい。本書を読み進めていく中で、みなさん自身がこれまで興味を示すことがあり得なかった分野にも知的好奇心をそそられていることに気づくだろう。
文=ムラカミ ハヤト
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