日本でハンバーガー文化を育てたマクドナルドの“人財有機養成論”って?

ビジネス

公開日:2018/8/1

『マクドナルドで学んだ最強の人と組織の育て方』(高橋正夫/アールズ出版)

 どこの店舗に入っても、一定のクオリティで同じ味のものが素早く提供される、「マクドナルド」。一利用者にとって、マクドナルドは何となく利用している、どこにでもあるファストフード店、というイメージかもしれない。しかし同時に、「マクドナルド」であることが保証されている安心感もあるはずだ。元々日本人に馴染みのなかったハンバーガーをここまで浸透させ、“当たり前”にするというのは、並大抵のことではない。これは、徹底したマネジメントとマーケティングの成果なのだ。

 先日、そのマクドナルドで得た技術を駆使して数々の企業を成功へと導いてきた伝説のコンサルタント・高橋正夫氏の著書『マクドナルドで学んだ最強の人と組織の育て方』(高橋正夫/アールズ出版)が発売された。本書は、「人財有機養成論」という、人間も有機栽培によって潜在能力が引き出されるという考えを中心に書かれている。土壌を作り、持ち味や独特の旨みを引き出すことで、しなやかで強い従業員が育っていくのだとか。

 そしてその土壌づくりには、きめ細かなマニュアルづくりが欠かせない。マニュアルというと、「応用が利かない」とよく思わない人もいるが、安定したサービスを安心して提供するには、マニュアルが必須なのだという。マクドナルドは、この“標準化”“専門化”“単純化”が徹底されたマニュアルのおかげでこれだけ人に受け入れられ、文化として根付いたのだ。

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 さらに社員全員がマクドナルドのノウハウをしっかりと学べるよう、「マクドナルド大学」を作り、そこで社の命ともいえるQSCV理念(Q=クオリティ、S=サービス、C=クリンリネス、V=バリュー)や「Be Daring(大胆不敵、勇猛果敢)」「Be First(迅速)」「Be Different(差異化)」などの「人を通じて成功をマネジメントできる店舗運営」の神髄を徹底して教えている。

「ハンバーガーではなく食文化を売る」という大きな目標を掲げて伝え、一人ひとりが社員であることを誇りに思い、モチベーションを保って働けるように配慮や投資を怠らない。これが、マクドナルドがクオリティを保ち続けている秘訣だ。そしてこれはなにも、マクドナルドや飲食業界でのみ効果を発揮するものではない。ファッションや建築、ファンビジネス、介護などあらゆる分野に通じる“経営の本質”なのだ。

 この『マクドナルドで学んだ最強の人と組織の育て方』には、ただ商品を売るだけではない、1つの文化を作り上げるためのマクドナルドのノウハウがぎゅっと詰まっている。そしてほかにも、そのノウハウをもとに介護大手のツクイ、カメラのキタムラ、ユニクロなどを実際に成功へと導いた軌跡も記されている。経営者はもちろんのこと、あらゆる社会人が読んでおいて損はない一冊といえるだろう。「うちは飲食店じゃないし」なんて思わずに、ぜひ一度、気になるところからでも読んでみてほしい。

文=月乃雫