核兵器がなくならない3つの理由。終戦記念日に改めて考えたい核廃絶の可能性

社会

2018/8/15

『世界から核兵器がなくならない本当の理由』(池上彰/SBクリエイティブ)

 広島の平和記念公園には1964年以来絶やすことなく灯り続けている一条の炎がある。「平和の灯」だ。この灯が燃え続けることはただ平和を象徴しているのではなく、核兵器が世界に存在し続けていることを意味しているのだという。

 わたしたちは8月15日に終戦記念日を迎えたが、毎年この日を迎えるたびに太平洋戦争で亡くなった方々に思いを馳せ、あの戦争は何だったのか考えさせられる。太平洋戦争中のできごとの中でも特に忘れてはならないのが広島と長崎に対する原子爆弾投下だ。わたしたち全人類は広島・長崎で被爆した方々の苦しみを記憶にしっかりとつなぎとめておかねばならない。原子爆弾をはじめとする核兵器の廃絶に向けて、わたしたちは小さいながらも一歩ずつ着実に前に進んでいく必要がある。

 しかし、昨今の報道を見ていると、北朝鮮の核開発問題やそれに対するアメリカ合衆国の態度、また世界で唯一の被爆国である日本の核兵器禁止条約交渉会議への不参加など、世界では核兵器廃絶とは逆行する動きばかりが目立つようだ。

 核兵器使用による悲惨な光景を目の当たりにしてから3四半世紀も経つのに、核兵器がなくなる気配を見せないのはなぜだろうか。本稿では、『世界から核兵器がなくならない本当の理由』(池上彰/SBクリエイティブ)に即して、世界の核兵器事情のひとつひとつを手に取ってみようと思う。

■世界から核兵器がなくならない3つの理由

 世界から核兵器がなくならない理由は主に3つ挙げられる。まずひとつ目の理由は、核兵器が「外交のカード」になってしまったことだ。現在公に認められた核保有国は英・米・仏・露・中の5カ国だが、このほかインド、パキスタン、北朝鮮がその所持を認めており、イスラエルは核兵器所持の可能性をちらつかせている。この中でも特に北朝鮮が、大国の関心を集めて経済的な援助を得ようと、核兵器を外交カードとして露骨にふりかざしているのは報道でも周知の事実だ。これをカードとしていくらふりかざそうとも、実際に核兵器が使用される可能性は低いと見られている。それは、核兵器の所持が核兵器使用に対する脅威として、「抑止力」がはたらいているからである。この「核の抑止力」が、核兵器が世界からなくならない理由の2つ目なのである。残りのひとつも非常に説得力のある理由なのだが、ぜひともみなさんには本書を手に取って参照されたい。

■核兵器被爆国である日本の態度は――

 ここまで、核兵器がなくならない理由を世界的な視点から見てきた。それに続いてここからは核兵器についての日本の動向を見ていこう。

 2017年3月に国連ニューヨーク本部で核兵器禁止条約の交渉会議が行われたのは記憶に新しい。この会議は核兵器を禁止する条約を、国連加盟国の7割弱の国々が協力して発効させるための交渉会議だった。

 現時点で唯一の被爆国である日本は、この会議に不参加だった。期待されていた会議に参加しなかったことについて、日本政府の公式見解は、「核保有国とそうでない国の対立を深めることになりかねない」というものだった。表向きには、この見解は核保有国とそうでない国の仲介役であるという耳なじみのよい響きをもつ。しかしその本音は、アメリカの核の傘で守られている日本が核兵器禁止条約の交渉会議に出たら、アメリカの機嫌を損ねてしまうかもしれない…という恐れがあるからだという見方が圧倒的に強い。

 その会議において誰も座ることがなかった日本の議席には、一羽の折り鶴が置かれていたそうだ。その鶴には “nuclearban”、“wish you were here”(「核禁止」「君がここにいてくれたらいいのに」)とメッセージが書かれていたという。世界の舞台で日本にしかできないことがきっとあったはずだと思えてならない。

 このほか、本書の最後には核なき世界が主に南半球の国々を中心に少しずつではあるが広がってきている明るい兆しについても紹介されている。わたしたちは、この核なき世界が全地球上を覆い、広島の「平和の灯」がその役割を終えて炎を消すまで、ちからを合わせて行動する必要がある。ちからを見せつけあうのではなくて。

文=ムラカミ ハヤト