「マンガワン」や「ツイ4」は何が画期的だったのか? これからのマンガビジネスを考えよう

アニメ・マンガ

2018/8/19

『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの? マンガアプリ以降のマンガビジネス大転換時代(星海社新書)』(飯田一史/星海社・講談社)

 ついに、電子が紙を超えた――。2017年、コミックスの売上において、紙が1666億円、電子が1711億円となり、両者の立ち位置は逆転した。確かに、電車の中でも、雑誌ではなく、スマホでマンガを楽しんでいる人をよく見かける。こうした変化を加速させたのは、やはり「LINEマンガ」や「マンガワン」などの「マンガアプリ」の隆盛だ。

 今やマンガアプリ市場は、新興のIT企業から伝統的な出版社までが参入し、玉石混交のレッドオーシャンとなっている。この先、日本のマンガビジネスはどう変化していくのだろうか。本書『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの? マンガアプリ以降のマンガビジネス大転換時代(星海社新書)』(飯田一史/星海社・講談社)は、マネタイズの多様化や、ブランドの構築が大切になり、従来の「雑誌は赤字でも、コミックスの売上で取り返す」というビジネスモデルが終わると予想している。本稿では、読者にもなじみ深いであろう「マンガワン」と「ツイ4」の事例をもとに、著者の分析の一部を紹介する。

■ユーザーの階層をつくる――「マンガワン」

「マンガワン」は、『モブサイコ100』(ONE/小学館)などのヒット作を持つ、新作の連載を中心としたマンガアプリだ。その収益源は、他のマンガアプリと同様の、コミックス売上や、各話ごとの課金、広告収入だけに留まらず、「ちょい足し」と呼ばれるおまけページへの課金や、連載作品のグッズ販売などもある。「ちょい足し」は、1枚20円に設定されており、「作品は好きだけど、コミックスを買うほどじゃない」という層からの少額の課金を狙う。反対に、「作家を支えたい!」と思っているような濃いファンには、通販で高単価のグッズを買ってもらう。つまり、「マンガワン」のユーザーは、課金額に応じて以下のような4段階の構造になっているのだ。

・「レンタルで読むユーザー」
・「ちょい足し保有ユーザー」
・「単行本保有ユーザー」
・「グッズの購入ユーザー」

 このように、読者のファン度に応じた課金ポイントを作ることによって、これまで「単行本が売れない」という理由で打ち切られていた作品にも、生き残るチャンスが生まれる。つまり、「レンタル」や「ちょい足し」で広く読まれていたり、少数でも高額のグッズを購入する熱心なファンがいれば、ビジネスとして十分成立するようになる。これが「マネタイズの多様化」である。

■レーベルのブランドをつくる――「ツイ4」

「ツイ4」は、4コママンガをツイッターとブラウザ版に毎日1話ずつ連載しているサービスだ。「ツイ4」が画期的なのは、ツイッター上に作品が掲載されるため、読者がおもしろいと感じたらすぐに「リツイート(拡散)」や「いいね」を押したり、リプライ機能で感想のコメントをつけられる点である。各作品のリツイートやいいねの数を見れば、読者は作品の人気を知ることができ、それがユーザーの「自分の好きな作品を応援したい」という心理を生む。さらに、「ツイ4」のリプライ欄では、ファン同士が気の利いたコメントを投稿し、そこで「いいね」の数を競い合う独自のコミュニティが形成されている。すべてが計画的なものではないだろうが、「ツイ4」はこのようにブランドを構築し、単行本を発売日に買ってくれるような熱心なファンを獲得している。

 マンガビジネスは、課金やシェアなどの機能を持つネットによって、大転換の時代を迎えている。本書は、取材に基づいた各サービスの詳細な事例や、マーケティング理論に裏打ちされた著者の分析を多数掲載しているから、これからのマンガビジネスを語る上では欠かせない存在になるはずだ。

文=中川 凌