「絶対に出る」と評判の幽霊屋敷写真集。写り込んだ幽霊を探してみる?

文芸・カルチャー

2018/8/24

『絶対に出る 世界の幽霊屋敷』(ロバート・グレンビル:著、片山美佳子:訳/日経ナショナル ジオグラフィック社)

 日本に限らず、世界にはたくさんの心霊スポットや幽霊屋敷がある。それぞれが忌まわしい殺人事件や凄惨な重大事故、あるいは歴史上の非業の死にまつわる物語とともに、現代まで長く語り継がれてきたものだ。『絶対に出る 世界の幽霊屋敷』(ロバート・グレンビル:著、片山美佳子:訳/日経ナショナル ジオグラフィック社)は、古城、教会、墓地、病院など、噂の絶えない有名な幽霊屋敷を幻想的な写真とおどろおどろしい幽霊話で紹介する写真集だ。

■幽霊屋敷の写真を覗き込むとき、あなたも向こう側から覗き込まれている?

 本書で取り上げられる心霊スポットは、どれも恐ろしい。騎士の怨念が棲みついたままの古城、今でもさまよう魂が目撃される墓地、猟奇殺人事件の舞台となった館、怪奇現象の絶えない廃病院。施設にひもづけられた逸話は凄惨だったり、あるいは涙を誘う物悲しいものだったりするが、現在の姿を捉えた写真はどれも美しく、1ページごとに細部まで見入ってしまう。

 ニーチェは有名な著作『善悪の彼岸』の中で、「汝が深淵を覗き込むとき、深淵もまた汝を覗き込んでいるのだ」と言った。哲学者であったニーチェが“深淵”と呼んだものは人間の深層心理を指すという見解が多いようだが、本書の美麗な写真の奥に潜んでいそうな暗部を一心に覗き込んでいると、写真の中の闇の部分もまたこちらを覗き返しているような不思議な気分に陥り、ぞっとする。

■古館で幽霊を目撃した者の悲惨な結末は

 今や世界中から多くの観光客が訪れる城や要塞は、かつて中世には暗く冷たい牢獄を備え、戦争ともなれば、命を落とす者が多数出た場所だった。本来の役割を終えても、建物が頑強なだけに元のままの姿を残すのと同時に、霊魂もまた一緒に取り残されているようだ。

▲英国・ハートフォードシャーの「ネブワースハウス」とその庭

 上記写真のネブワースという館には「黄色い少年」と呼ばれる幽霊が今でも住んでいる。その幽霊を見た者は自分の死期を予感するのだという。少年を見た後、自殺する者もいるのだとか…。

▲カナダ・バンフの「バンフ・スプリングス・ホテル」

 うれしくない話だが、多くの人が集まる場所では、悲惨な出来事が起きる確率もおのずと高くなる。そしてその悲劇の現場には幽霊が出るという噂が立つのも世の常だ。ホテルや旅館では、宿泊客が病死することは珍しくない。時には、殺傷事件や自殺の現場になることもあるため、死者の霊がとどまっている可能性は非常に高いそうだ。ベルボーイの幽霊が現れることで知られる写真のバンフ・スプリングス・ホテル(カナダ)は、1920年代に建てられた有名ホテルで、過去にはマリリン・モンローもハネムーンで滞在したという。

▲米国・マンスフィールドの「オハイオ州立少年院」は1990年に閉鎖され、映画『ショーシャンクの空に』『デッドフォール』などのロケ地としても使用された建物

▲チェコ共和国の「セドレツ納骨堂」では、1870年に木彫り職人の手によって人骨を使った装飾が施された

 写真とそれにまつわる心霊的な逸話は、どれもこの世に残っている霊魂の恨みや記憶までもが焼き付けられているような奥の深さを感じさせるものばかりだ。この夏休みにどこにも出かけることができなかったと独りでぼやいている方は、ぜひ本書の幽霊話や心霊スポットマップを通して、風変わりな世界旅行を妄想してみてはどうだろうか。その先は“幽霊”という旅の友を得る貴重な体験に繋がっているかもしれない…。

文=田坂文