棚橋弘至が悪者に! 父から息子へ伝えたい大切なこと。映画『パパはわるものチャンピオン』原作絵本はパパ必読!

文芸・カルチャー

2018/9/21

©2018「パパはわるものチャンピオン」製作委員会

 新日本プロレスによる真夏の最強決定戦で、見事チャンピオンにのぼりつめた棚橋弘至が主演をつとめる映画『パパはわるものチャンピオン』。「100年に一人の逸材」と呼ばれるエースが、真逆のわるもの? というのも気になるところだが、原作が絵本だというのはご存じだろうか。『パパのしごとはわるものです』『パパはわるものチャンピオン』(ともに、板橋雅弘:作、吉田尚令:絵/岩崎書店)。もし「へ~そうなんだ、でもプロレス興味ないし……」と思った方はちょっと待ってほしい。この絵本、子供だけでなく働くすべての大人たちに読んでもらいたい作品なのだ。

『パパはわるものチャンピオン』(板橋雅弘:作、吉田尚令:絵/岩崎書店)
『パパのしごとはわるものです』(板橋雅弘:作、吉田尚令:絵/岩崎書店)

 ストーリーはシンプル。学校の宿題で「お父さんの仕事」を調べるために、パパの車にこっそり乗りこんだ“ぼく”。筋肉モリモリのパパがなんの仕事をしているのか――向かった先は体育館。なんとパパはゴキブリマスクという覆面悪者レスラーとして、リングでブーイングを浴びながら人気レスラーのドラゴン・ジョージを痛めつけていた。

(『パパはわるものチャンピオン』より)

 子供にとってこれほどショックなことはない。ヒーローは絶対正義。悪者は倒されるべきもの。それが世のおとぎ話の常なのだから。だがパパは言う。「わるものがいないと、正義の味方が活躍できないだろう?」。

 善悪なんて相対的なものだ。ヒーローしか存在しない世界でだって、必ず落ちこぼれや“だめ”とされる人は生まれる。誰かが光り輝くとき、その陰には必ずその誰かを引き立てる存在がいる。たいていの人間は、なれるものならヒーローになりたい。だから応援する。“ぼく”だって最初は、ドラゴン・ジョージを応援していた。自分のパパにも、そっち側に立っていてほしかった。

 だけどパパは、悪者の自分を恥じていない。観客からブーイングを浴びることにも誇りを持っている。その姿を見て、どうしてパパが悪者なんてやらなきゃいけないのかと納得しきれなかった“ぼく”が口にしたこのセリフ――「わかんないけど、わかることにする」に込められたものは、とても重い。大事なのは完全に理解することではなくて、尊重することなのだから。

(『パパのしごとはわるものです』より)

 ゴキブリマスクが大嫌いな友達に、正体をこっそり教えたら少しは好感度があがるかもしれない。なんで応援するの? なんて責められることもない。だけど“ぼく”は言わない。だってそれはパパの役目じゃないから。パパが悪者であればあるほど、ドラゴン・ジョージの勝利は観客に爽快感をもたらす。だからといって負けることもパパの役目ではない。勝っても負けても、観客の怒りや不満をすべて受け止め、リングの上で表現する。それこそがパパの、ゴキブリマスクの仕事。パパは誇り高き“わるもの”なのだ。

 ちなみにこのドラゴン・ジョージ、やけに棚橋さんに似ているなと思ったら、やはりモデルなのだという。映画のノベライズは、作者の板橋さんがみずから書き下ろしたプロレス愛あふれるもの。映画のシーンを表紙に使った「期間限定映画化特製カバー」もあるそうなので、あわせてぜひ手にとってみてほしい。

『ノベライズ パパはわるものチャンピオン』(板橋雅弘:著、藤村享平:脚本/岩崎書店)

文=立花もも