愛らしいけどグロテスク! 世界が熱狂する「カワイイ/KAWAII」って?

エンタメ

2018/9/24

『世界にひとつだけの「カワイイ」の見つけ方』(増田セバスチャン/サンマーク出版)

「カワイイ/KAWAII」というキーワードが世界のポップカルチャー界に広がっているという。既存の「無害な可愛らしさ」ではなく、ある種の毒や反抗意識もはらんだ世界が「カワイイ」であり、海外ではかつての「COOL」に代わって使われる場面も多いという。

 きゃりーぱみゅぱみゅのMVも手掛けた「カワイイ」第一人者の増田セバスチャン氏が、「カワイイ」の正体を解き明かしたのが『世界にひとつだけの「カワイイ」の見つけ方』(増田セバスチャン/サンマーク出版)だ。著者の人生哲学も詰め込まれた本書は、愛らしいタイトルとはうらはらに骨太な1冊である。

■寺山修司との出会いから生まれた「カワイイ」

 著者の原点は、原宿にあるアパレルショップ「6%DOKIDOKI」。カラフルでポップな世界観が、ここからグローバルに広がっていった。

 ショップ経営・アーティスト・大学客員教授などの華やかな経歴だけみれば、著者は悩みのない成功者のように見えるかもしれない。だが実際は幼少期から生きづらさという深い闇を抱えていた。それは機能不全に陥っていた家庭で負った心の傷であったり、他人と同じ生き方を押し付けてくる旧態依然の価値観への違和感などであった。

 だが、苦しみの時期に出会った現代文学の名著『書を捨てよ、町へ出よう』(寺山修司/角川書店)が著者を変える。そこから “ふつうという抑圧”への反骨精神が氏独自の世界観のベースとなった。

 美に正解はなく、年齢や性別を超えて「好きなものは好き」でいい。何事にもとらわれなかった子ども時代のように、自分らしく生きたい!という自由の叫び、それこそが「カワイイ」の正体である。

■少しの毒——自分だけの「カワイイ」

 だからこそ、著者が表現する「カワイイ」には少しの毒や反抗心が潜んでいる。外国のお菓子のような愛らしい色の洪水の中には、よく見ると虫や目玉が紛れ込んでいる。ソフィア・コッポラ氏が「クレイジー!」と叫び、糸井重里氏が「カラフルなはらわた」と表現したように、愛らしさとグロテスクさが共存する様には「影があるから光が存在できる」という著者の人生観が反映されているのだ。

 著者が「カワイイ」を「自分だけの“小宇宙”―それは、だれも邪魔することができない、自分だけが愛でることのできる“小さな世界”」と定義するように、「カワイイ」は個人の生き方そのものなのである。

■これからの「カワイイ」

「カワイイ」への共感は世界へ広がっている。ロンドン・パリ・サンフランシスコなどでの大反響を受けて日本への逆輸入現象すら起きており、カラフルでキッチュな美は一定のポジションを築いた。

 しかし著者は、そんな今だからこそ、「自分の色をかき乱せ」とメッセージを発した。商業的で視覚的なカラフルさにとらわれないで欲しい、本質的なその人らしさこそが「カワイイ」だからだ。さらにお互いの「カワイイ」を許容しあうことで世界は変わっていくだろう。

 既存の価値観に「NO!」を突き付ける「カワイイ」の旅は、死ぬまでゴールにたどり着かないかもしれない。だがむしろそうあるべきだ、とも著者はいう。

■色をまとい、町へ出よう

 終章、本書は「つまらない毎日を『カワイイ』で塗り替えよう」と呼びかける。自分らしさを追求することのワクワク感と真摯な姿勢を理解したいま、「だれのもとにも、それぞれにハッピーでカラフルな未来がやってくることを願って……」という著者のメッセージは胸に響いた。なにか小さなものでも、ほんとうに自分が好きと思える色を身につけてみよう。その瞬間から、人生はもっと自由に楽しくなる。

文=桜倉麻子