SNS全盛時代に「おひとり様」がブームになるワケ。必要とされる「孤独の達人」

暮らし

公開日:2018/10/2

『孤独の達人』(諸富祥彦/PHP研究所)

 人気マンガを原作として実写ドラマ化もされた『孤独のグルメ』は、“おひとり様文化”を牽引する人気番組だ。人目を気にせず気楽に自分の食べたいものを食べ、それをじっくり楽しむ。それができる人は「孤独」を楽しんでいると言えるだろう。

『孤独の達人』(諸富祥彦/PHP研究所)は、「孤独」を掘り下げ、内面的な充足を得る「深い自己」を味わうための指南書である。本稿では本書から、そんな「深い自己」を得るためのヒントを紹介していきたい。

■あなたの「孤独」はどのタイプ? 孤独の様相を分析すると

 著者によると、孤独にはおおまかに分けて3つの様相があるという。

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【1】社会的孤立。離婚、死別、破談、失職などがもたらす、さみしくつらい孤独。「非選択的」な孤独。

【2】自由と解放の孤独。しがらみや同調圧力から解放された孤独。主体的に選択し直された、「選択的」な孤独。

【3】深い孤独。静かに己と向き合い、自己の内面を見つめていく孤独。

 本書では、この3番目の孤独に着目している。せわしない時間の流れを止めて、己の内面を見つめ、真の自己を取り戻す。それが人間に真の成長をもたらすという。深く自分自身でいることで、内面的な充足を得る。いつも他人と一緒にいると、自分を見失ってしまうことがあるだろう。それが己の中に芯を作ることで、人生に豊かさを与えることができる。

■「孤独」を深めて自己を確立するためのステップは

 では、深い自己を持つためにはどうすればいいのだろうか。著者は、その自己を得るためには4つの条件があると説明する。

(1)他者との比較をやめること
 著者は、競争は本質的な価値を持たないと指摘する。仕事の成果や学校の成績などを人生の中心に置いてしまい、他者との比較において自分の価値は決まると思い込んでしまうと、自己は死んでしまうからだ。

(2)一人の時間を十分に持つこと
 人間は、自分が馴染んでいる社会の価値観から、自分の価値を推し量る傾向があるという。つまり、物理的にひとりになることが自分の軸を取り戻すことにつながるのだ。

(3)自分の内側とつながる
 ひとりの時間を持ったとしても、モヤモヤしたまま思考の堂々巡りをしていては意味がないだろう。大事なのは、自分の内側の深いところと繋がり、自分がこれからどうありたいか、どう生きていくかを意識して思考を深めていくことだ。

(4)我を忘れて取り組める何かを見つける
 ただ好きなことをするのではなく、「私はこれをするために生まれてきたのだ」と思って打ち込めるような何かを見つけること。それに没頭すると、心は深く満たされ、底力を発揮することができる。

「心が自由に生きている」と真に感じることが、充実した暮らしを作る、と著者は語る。周りに合わせずに済む生き方は、精神を自由にし、大きな充足を生むことができそうだ。

 現在の世の中はSNSなどのネットを手放せない、「繋がりたい」願望が強い世の中だが、それは自分の思考の軸を、他人任せにしてしまう原因にもなりかねない。人と繋がることは悪いことではない。しかしながら、深い孤独を自分のものにすれば、個人として大いに「強く」なることができる。「繋がり」には流されない自己が手に入るのだ。それはつまり、自分らしい軸を持ちながら、繋がりによってもっと大きく己の能力を開花させることができることにもつながる。このチャンスを最大限使うほかはない。人生において、「孤独」という、大いに頼りになる“筋肉”を身につけてみてはどうだろうか。

文=ジョセート