絶対明かせないアイドルの秘密が壮絶!? 愛憎劇が強烈スパイスになった異色グルメ漫画

マンガ・アニメ

2018/10/14

『美食探偵 明智五郎』5巻(東村アキコ/集英社)

 ループタイ(紐状のネクタイなんですけど、知ってます?)がトレードマークの、イケメンなんだけど独特のファッションセンスと、食に対するただならぬこだわりを持つ私立探偵、明智五郎。そんな明智探偵が、近所の移動販売デリを営む小林苺(通称:小林一号)を一方的に助手とし、食が重要な役割を果たすさまざまな事件に向かっていく様子が描かれた『美食探偵 明智五郎』(東村アキコ/集英社)の最新巻を紹介します。

■モンスター化したファンを、天使が殺す

 秋葉原の地下アイドル「爆音エンジェルズ」の堕天使担当メンバー、“ココ”は、熱烈なファンにつきまとわれ、明智探偵と小林苺に相談します。そんな中、ファンの行動はエスカレートし、他のメンバーにまで危害を加えるようになります。精神的に追い詰められたココは、ツイッターで知り合った“マグダラのマリア”を名乗る女性から、そのファンに罰を与える方法を指南され、致死量が入っているとは知らないまま、ファンに毒入りキノコパスタをふるまってしまいます。明智探偵から「知らなかったとはいえ、ココは殺人を犯してしまった」という真相を知らされた爆音エンジェルズたちの反応や、今後のアイドル活動への影響は…? 詳しくは本書にて楽しんでください。

■マグダラのマリアと、その仲間たちの次の標的は?

 第1巻から登場するこの“マグダラのマリア”は、実は、過去に夫の浮気調査を明智探偵に依頼した女性、すなわち明智探偵の元クライアント。彼女は、明智探偵から調査結果を聞くと、夫を刺殺して姿をくらまし、自らを“マグダラのマリア”と名乗って、他人の殺人にまで手を貸すようになります。

 その殺人犯たちはというと、「遠距離恋愛の恋人が浮気していると知らないまま、故郷の味をせっせと送り続けていた、青森のリンゴ農家の娘」「客から一方的にグルメサイトで酷評された、フレンチレストランのシェフ」「結婚後も義母から送り付けられるおかずしか食べない夫を持つ、専業主婦」など。彼らはいずれも、“自分が作る料理が、大切な人に受け入れられない”という事が殺意に繋がっていました。

 かくいうマグダラのマリアが夫を刺殺したのも、夫はマグダラのマリアが作る料理は味噌汁と焼き魚しか食べなかったのに、ランチタイムには飲食店開業を夢見る若い女性のアパートへ行って、彼女が作る数々の試作品を食べ、真剣にアドバイスをしていたと知ったから。マグダラのマリアと、彼女に殺人を手助けしてもらった殺人犯たちは、奇妙な連帯感で行動(もっぱら殺人)を共にすることになっていきます。そしてこの第5巻の後半では、その毒牙はついに助手の小林苺へと伸び、マグダラのマリアと明智探偵との直接の愛憎劇も見え隠れしながら、第6巻に続くのですが…。

■異色の“グルメ漫画”から、目が離せない

 本書は、“食”が題材の中心でありながらも、それに関わる謎解きや愛憎劇が描かれた、異色のグルメ漫画と言えるでしょう。事件に登場する料理は、どれもおいしそうであるものの、その背後には歪んだ愛情が見え、読んでいて背筋が寒くなることもあります。しかしそこは東村アキコ、本書内でしっかり中和してくれるのが、見どころです。それはたとえば、明るくしっかり者の小林苺が作る、実家の仕出し屋仕込みのおかずや、日替わり弁当といった存在。その中でも、青海苔いっぱいの「ちくわの磯辺揚げ」は、明智探偵の大のお気に入り。明智探偵と小林苺とのコミカルでテンポのよいやりとりが一服の清涼剤となり、物語はぐんぐん進んでいきます。目が離せなくなること間違いなしのグルメ漫画です。

文=水野さちえ