「…………。」会話が超苦手という人でも営業できる「無言力」とは

ビジネス

2018/10/18

『無言力 会話のない究極の力』(上野真司/ダイヤモンド社)

「デキる営業マン」と聞いて、どんな人を想像するだろうか――。今、あなたの脳裏には職場で活躍している“あの人”の顔がチラリと浮かんでいるかもしれない。優秀な営業マンは、まず人と会話する能力が高く、電話営業や接待の場でスッと顧客の懐に入っていき、次々と契約をものにしていく…というイメージがある。そんな営業マン理想像と比較して、「自分は話すのが苦手だし、向いてないかも…」と諦めてしまうのは早計だ。本書『無言力 会話のない究極の力』(上野真司/ダイヤモンド社)は、「苦手な会話は必要ない」「目標が達成できるなら、アプローチが違っても構わない」と語る。著者もまた、話すことが苦手な不動産会社の営業マンだった。だが、その成績はいつもトップ。そこには、苦手な会話で無理をせず、自分の強みを鍛えてきた過去がある。

■電話が苦手なら、メールでもいい

 目標が「営業で結果を出すこと」だとすれば、なにも会話力ばかりにこだわる必要はない。著者は、苦手なことで戦っても勝てないのだったら、自分の得意分野を見つけて徹底的に磨くべきだと語る。「会話が苦手」だという自覚があるのなら、上司たちにいくら「電話営業をやれ」と言われても、別の手段で成績を上げることを考えられるようにしたい。

 電話が嫌いだという著者は、営業のメインツールを“メール”と決め、人一倍思考と時間を費やして営業をかけた。メールの利点は、常に会話の先を想定しながら書けることだ。彼は返事待ちの時間に次の文章を用意したり、顧客の熱を敏感に感じ取り適切なリズムで返信したり…などの工夫を行い、次々と顧客の信頼を勝ち得てきたという。顧客と直接会うのが契約日当日のみ、なんてことも少なくなかったのだとか。

■言語「じゃないほう」のコミュニケーションを活用する

 コミュニケーションは、声や文字になった言葉だけで行うものではない。相手のちょっとしたしぐさや癖、表情などから“空気を読む”ことも、営業マンにとっては大切なスキルだ。

「相手はどういう人なのか?」と考えながら観察することで、会話の表面上には現れない相手の心理状態を推し量ることができる。例えば、著者は顧客とメールのやりとりをする際、それが携帯とパソコンのどちらから送られているか、今相手はリラックスした状態か…などを推測しながらコミュニケーションを組み立てていく。さらに、顧客が「この商品を買います」と決断した後も、契約日まで油断はしない。意思表示から契約日までの期間が空くほど断られるリスクが高くなるため、相手の熱量を下げないようにメールでのフォローを欠かさないという。

 タイトルにある“無言力”には、会話力以外に社会人が鍛えられえる能力――働く上での意識や思考力、行動力などが数々含まれている。企業は採用面接で「コミュニケーション能力」を重視すると言われているが、当然ながら人はそれぞれ得意なことが違う。苦手なことがあるならば、代わりに別の何かを極めればいい。不完全な人間だからこそ、不安定な社会を乗り越えられる――本書には、著者のそんな想いが込められている。

文=中川 凌