「痩せる」「体にいい」「若返る」健康食ブームに潜む甘いワナ

食・料理

2018/11/17

『体にいい食べ物はなぜコロコロ変わるのか』(畑中三応子/ベストセラーズ)

「ファッションフード」という言葉を聞いたことがあるだろうか? 『体にいい食べ物はなぜコロコロ変わるのか』(畑中三応子/ベストセラーズ)によると、「食の情報化が世界でも突出した日本で、洋服のようにとっかえひっかえ消費される流行の食べ物」のことだという。

「私たちはモノを食べるとき、一緒にアタマで情報も食べている」と本書の著者は語る。明治維新のときにはすでに「健康」に役立つということが、食べ物の流行条件のひとつとなっていたそうだ。また、高度成長期以降は、公害や食品汚染といった社会問題の影響もあり、体にいい食べ物のブームは頻繁に起こってきた。

 その中で、美容や健康を気にするあまり、私たちはときに根拠に乏しい「食」のブームにも乗ってきた。そこで本稿では本書の中から、私たちを操ってきた「健康にまつわる食」のもつ一側面について紹介したい。

■その健康食は、本当に「健康」?

 健康というキーワードには、人々がはまりやすい甘い罠が隠されているという。そこに登場するのが「フードファディズム(food faddism)」という言葉だ。教育学者・栄養学者の高橋久仁子氏はこのフードファディズムを「食べ物や栄養が健康や病気に与える影響を、過大評価すること」と定義する。体への良し悪しの情報にまどわされて、ときに人々は偏執的な食行動をとってしまうこともある。

 フードファディズムには以下の3つのタイプがあるという。

(1)健康への好影響をうたう食品の爆発的影響
 あるものを食べると全て解決、もしくは短期間のうちに痩せることができるとうたう食品が大流行すること

(2)食品・食品成分の「薬効」強調
 食品が含む有効成分の量や、効果が発現する量には触れずに、効果を主張すること

(3)食品に対する期待や不安の扇動
 特定の食べ物が体に良いと言ったり、悪いと決め付けたりすること

 情報に踊らされてしまうと、かえって肥満や栄養失調になるような健康被害、あるいはお金を余計に使いすぎる経済的被害をもたらすことにも繋がりかねない。こうしたフードファディズムがはびこる条件には、「十分な食料の供給」「過剰な健康志向、健康であらねばという脅迫」「食事の供給や製造、流通に対する漠然とした不安や不信」「大量の情報の提供と論理的な思考の欠如」という4大要素が揃っていることが必要だというが、これはまさに現代日本の置かれた状況であると著者は危惧する。

■偏った情報に踊らされないために、何が必要?

 皆どこかで自分がフードファディズムに踊らされていると気づいてはいるものの、その食品に手を出してしまうこともある。それは「体にいいものを選んでいる」という安心感を得るためだ。

“そんなふうに、いたるところで遭遇し、避けることのできない健康情報に右往左往せず、ましてや抑圧されることなく、楽しみながら付き合っていけたらいいと思う。体にいい食べ物は、ほどよい匙加減で取り入れるのが一番ではないだろうか”

 著者はこう語る。

 自分が口にする食品の情報を断ち切ったり、自分や家族の健康を心配しなかったりすることは難しい。けれども、「食」に潜む一過性の罠にはまって失敗しないために、「もしかしたら偏った情報に操られているのかもしれない」という自覚をもつことは、私たち自身のためにきっと役に立つだろう。

文=ジョセート