入ってはいけない…「禁足地」。巡るからこそわかる、その「畏怖」と「恐怖」
公開日:2018/11/18
人が足を踏み入れてはならない場所「禁足地」。してはダメと言われると、したくなるのが人間の心理です。足を踏み入れてはいけない場所ほど気になりますよね。そんな数々の禁足地に足を踏み入れているのが、『禁足地巡礼』(吉田悠軌/扶桑社)です。
本書では、「日本の禁足地」が持つ「恐れ」と「怖れ」と「畏れ」について考察しています。なぜ「入ってはいけない場所」が生まれ、人々はそこに「畏怖」と「恐怖」を覚えるのでしょう。
そもそも禁足地は、奈良県大神神社の「三輪山」や「沖縄の御嶽(ウタキ)」のように、主にご神体とされている山や祈祷所のような神聖な場所であることが多いのが特徴です。
その一方で、千葉県市川市の「八幡の藪知らず」のように、謂われがはっきりとわからなくても未だに「入ったら出てこられない」といわれている怪談要素の強いところもあります。
著者の吉田さんは、怪談、オカルト研究家で、怪談の収集、怪談現場や怪奇スポット、奇祭など探訪をライフワークとしていて、その活動は国内だけにとどまりません。世界の奇祭や日本の禁足地を紹介する活動もしています。
その中の1つとして本書で紹介しているのが、古代信仰が残っている長崎県の対馬にある禁足地「オソロシドコロ」。うっかり足を踏み入れたものは、わらじを頭に乗せて「インノコ」(犬の子)と、自分は人間でないと言いながら後ずさって出なければならない、転んだときは片袖をちぎって身代わりに置いていかなければいけないなど、厳格な畏れの地だったといいます。
そんな畏れの地である禁足地ですが、時代とともにその姿は変わりつつあるようです。男子禁制、女性禁制であった場所が、時代の移り変わりとともに男性も女性も参拝できるようになったり、管理者・後継者がいなくなって消えていったりしたところもあるといいます。
また、対馬のお隣、沖之島はいまだに島全体が禁足地で、限られた男性が祭りの日に入ることだけが許されていましたが、世界遺産に認定されたことで、禁足が格段に厳しくなっているところもあります。
本書では、誰も体系的に論じたことのない「日本の禁足地」が持つ「恐れ」と「怖れ」と「畏れ」について考察しています。そして現代ならではの新たに生まれた禁足地の姿も明らかにされています。日本各地に点在する禁足地のすべてがつまった1冊です。
文=桜子
レビューカテゴリーの最新記事
今月のダ・ヴィンチ
ダ・ヴィンチ 2024年4月号 日本酒のそばにある物語/鈴木おさむ
特集1 一合の“宇宙”から生まれる 日本酒のそばにある物語/特集2 辞めたその先に見えてくるもの 鈴木おさむと拓く、新しい道 他...
2024年3月6日発売 価格 770円
人気記事
-
1
-
2
-
3
-
4
-
5
人気記事をもっとみる
新着記事
-
連載
自分の代わりにデートに行った友人。デート中にとんでもない事をしたようで!?/カッパ少年紅介〜昭和妖怪恋物語〜⑫
-
連載
上に懲りずSNS更新中!?「子どもを集客素材として利用する」セレブママに批判が集まる/子どもをネットにさらすのは罪ですか?⑪
-
連載
誰にも理解してもらえない孤独感…元気な息子に振り回されて、ついイライラしてしまう/消えたママ友⑱
-
連載
「やるって言ったらすぐにやれ!! 最後までやれ!! 」夫に娘の歯医者の予約を任せていたら、1ヵ月も放置した挙句…/子育てしたら白目になりました【傑作選】
-
特集
圧巻の試合シーンに徹夜必至!増田俊也の最新小説『七帝柔道記II 立てる我が部ぞ力あり』3月18日発売。みんな泣いた、青春小説の金字塔11年ぶり待望の続編!
今日のオススメ
-
ニュース
『スキップ・ビート!』ついに50巻へ…連載開始から20年以上、 老若男女問わず愛され続ける理由とは?
-
レビュー
イーロン・マスクやピーター・ティール…莫大な富を持つシリコンバレーの天才たちが目指すものとは? 世界の未来像を映し出す、世界で今起きていること
PR -
特集
剣撃を奏で、世界を切り開け。「ばいばい、アース」WOWOWで2024年7月より放送・配信スタート! さらに各配信プラットフォームで配信予定!
-
レビュー
後味が悪すぎる映画で有名な「ミスト」の原作ってどんなの? スティーヴン・キング原作短編集は実は結末が違う…!
-
レビュー
推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない人へ。ありきたりな感想から抜け出すためのオタク文章術
電子書店コミック売上ランキング
-
Amazonコミック売上トップ3
Amazonランキングの続きはこちら -
楽天Koboコミック売上トップ3
楽天ランキングの続きはこちら