幻の原画が復活! クリスマス前夜に雪の上に放り出されてしまった、不思議な力を持った少女の物語

文芸・カルチャー

2018/11/22

『星のひとみ』(せなけいこ:絵、石井睦美:文、サカリアス・トペリウス:原作/KADOKAWA)

 11月も半ばを過ぎ、街はクリスマスに向けて動いている。キラキラと輝くイルミネーションが飾られ、ケーキやチキンの予約のポスターが貼られ、「クリスマスプレゼントは何にしよう」と考える人で活気づく。そんな華やかなクリスマスも楽しいものだが、毎年繰り返されるお祭り騒ぎに疲れてしまったら、たまには静かなクリスマスや美しい冬の景色に思いを馳せるのもいいものだ。

『星のひとみ』(せなけいこ:絵、石井睦美:文、サカリアス・トペリウス:原作/KADOKAWA)は、人気絵本作家・せなけいこが手掛ける、神秘的で美しい物語。原作は「フィンランドのアンデルセン」と呼ばれるトペリウスの名作童話だ。

 クリスマスの前夜、雪の中狼に追われ、そりから落ち雪の上に放り出されてしまった小さな赤ちゃん。泣くこともせず雪の上でただじっと夜空を見上げていると、赤ちゃんの瞳に魅入られた星の光が瞳に入り込む。その後奇跡的に通りかかった農夫に拾われ、赤ちゃんは牧師によって「星のひとみ」と名付けられ育てられた。

 しかし星のひとみが3歳になったある日、おかみさんは彼女の瞳に人を穏やかにする力、そしてすべてを見通す力があることに気づく。気味が悪くなったおかみさんは彼女を床下の穴倉へ閉じ込め、最終的には拾った場所へと捨ててしまう。すると、今まで何不自由なく暮らせていたその一家に災いが降りかかるようになり――という物語。捨てられた「星のひとみ」は、その後行方不明になり最後まで見つかることはない。

 大人が読んでいると、拾った他人の赤ちゃんを「クリスマスプレゼント」だと話し当然のように自分の子として育て始めるなど、「えっ!?」と驚く展開もあるが、同時にいろんなことを考えさせられる。おかみさんはどうするのが正しかったのだろう? 捨てられたあと、「星のひとみ」はどうなったのだろう? 瞳に入った星は、なぜ彼女に不思議な力を与えたのだろう? そもそもこの力は、本当に星の力なのだろうか? つい想像してしまう。

 基本的には子ども向けの絵本なので、子どもに読み聞かせながら一緒に結末を想像してみると、想像力を育む良いきっかけにもなりそう。大人が読んでもいろいろと想像力をかき立てられるので、童話や絵本が好きな人にもオススメしたい。もしかしたら、あなたの近くにいるあの子が「星のひとみ」かも……?

文=月乃雫