北区王子の商店街が舞台の「陰陽屋」人気シリーズ最新! 瞬太、無事に卒業できるのか…!?

文芸・カルチャー

2018/11/26

『よろず占い処 陰陽屋秋の狐まつり』(天野頌子/ポプラ社)

 長年愛されている人気作「よろず占い処 陰陽屋」シリーズ最新刊が発売された。『よろず占い処 陰陽屋秋の狐まつり』(天野頌子/ポプラ社)は、シリーズ11巻目となる。

 本作は東京都北区王子の商店街にある「陰陽屋」を舞台にした、イケメン毒舌陰陽師・安倍祥明(あべ・しょうめい)と、アルバイトの抜けてる化け狐の高校生・瞬太、その他様々な味のあるキャラクターたちが繰り広げる、ドタバタほっこりコメディ小説だ。(既刊のレビューはこちらへ)。

 前巻では、紆余曲折を経て、捨て子だった瞬太の実の母親が発覚。そして、人間と化け狐の「時間の経ち方」が異なるため、これ以上人間と一緒に生きることは難しいということに、瞬太は驚き、悩むように。

 そして本作。いよいよみどりさんや吾郎さん(育ての両親)や、頼もしい同級生たちとの別れが訪れ……。

 ……と思っていたのだが、そういうシリアスな展開ではなく、まったく勉強をしていない瞬太が、「高校を無事に卒業できるように、がんばる」というお話でした(笑)。

 化け狐の瞬太は夜行性なので、昼間起きていることができず、いつも授業を聞いていないため勉強ができない。高校3年生と言えば、就職か進学かという「進路」を決める時期でもあるが、それより瞬太はまず「卒業」。その先のことは、それから考えよう……という、「大切な人たちとの別れ」とか、そういう話以前の、現実的な問題に直面していた。(瞬ちゃん、がんばれ……!)

 そんなわけで、瞬太は単位を取るための勉強に励みながら、親戚の赤ちゃんが自宅に泊まりに来たり、文化祭で手相占いをやったり、律子(瞬太にプリンをくれる陰陽屋の常連客)に浮気相談をされたりと、様々な「ドタバタ」に巻き込まれていく。

 一方で、まだギクシャクしている本当の母親と会ったり、瞬太の出生にかかわるかもしれない怪しいキツネの気配があったりと、物語の核心に迫る展開も少しずつ進展している。

 瞬太と、彼の大切な人たちとの「別れの時」は、やっぱり確実に、少しずつ近づいているようにも思えた。それがちょっと切なかった本作。果たして瞬太は、どういう決断をするのだろうか。その時、祥明は……。続きが気になる。

 ちなみに「オーディオブックを声優・ナレーターの声と演技で楽しむ朗読サイト!kikubon(キクボン)」で、3巻『陰陽屋の恋のろい』が配信スタートしているそうだ。さらに来年には、瞬太役の声優・松元惠さんに加え、祥明役に諏訪部順一さん、委員長役に小野友樹さんという人気声優陣による朗読劇の開催が決まった(時期等は未定)という発表があった。こちらにも気になる!

文=雨野裾