凶悪犯たちはどうして事件を起こしたのか…? “悪の心理学”で暴く衝撃のクライムサスペンス

文芸・カルチャー

更新日:2018/12/19

『ヘルハウンド 犯罪者プロファイラー・犬飼秀樹』(青木杏樹/KADOKAWA)

 凶悪犯罪者の胸の内を「悪の心理学」で暴く新しいヒーローが誕生した。その名は、犬飼秀樹。青木杏樹氏著『ヘルハウンド 犯罪者プロファイラー・犬飼秀樹』(KADOKAWA)に登場する犯罪心理学者だ。天才的な頭脳。心理学に裏打ちされた巧みな話術。哀愁の漂う色気のある容貌。新しいヒーローが織りなす犯罪心理サスペンスにハラハラドキドキ。読み進めるほどに、犬飼の魅力にハマっていってしまう。

 犬飼秀樹は、犯罪心理学の准教授であるかたわら、“特権法”登録ナンバー〇〇二――難解事件の捜査を特別に国に認められた民間人プロファイラーだ。そんな彼を頼って、幼馴染の副検事・諭吉龍一郎が、凶悪事件の捜査協力を持ち込んでくる。犯罪心理への異常な執着から「黒妖犬(ヘルハウンド)」の異名を持つ犬飼は、凶悪犯にどんどん食らいついていく。凶悪犯の胸の内に隠された真実がどんどん明らかになっていく。

 本作で扱われるのは、本格ミステリーファンも唸るような凶悪事件ばかり。そんな事件を犬飼は犯罪心理学を用いていとも簡単に解き明かしてしまう。犬飼と凶悪犯たちの対決は必見。特に、相手に揺さぶりをかけながら取り調べをする場面は手に汗握る。凶悪犯たちはどうして事件を起こしたのか。全体像がつかめなかった事件が、犬飼の話術によって、次第につまびらかにされていくのは、快感だ。

advertisement

 この本は、当然、凄惨な凶悪犯罪の数々や犯人の深層心理が扱われるから、シリアスでダークな描写が多い。しかし、魅力はそれだけではない。そんなシリアスなミステリーをコミカルに読み進めていけることが最大の魅力だ。それを可能にしているのは、登場人物たちがあまりにも個性的であるためだろう。犬飼は、天才的な頭脳を持つクールな犯罪心理学者でありながら、死体マニアで被害者を「恋人」と呼ぶ変態っぷりだし、諭吉も、ハーフのイケメンでありながら、心配になるほどの真面目っぷり。そんな2人の名コンビのやりとりには思わず吹き出してしまうことも多々。シリアスな場面もあれば、コミカルな場面もあり、そのバランスがなんとも心地よく、気がつけば、ページを読む手が止められなくなっている。

 幼い頃から強い絆で結ばれてきた犬飼&諭吉。しかし、とある事件が2人に最大の危機をもたらしていく。その時2人は……。ミステリーファンも、普段ミステリーを読まない人も楽しめるこの衝撃のクライムサスペンスをぜひとも読んでみてほしい。

文=アサトーミナミ