「私って傷つきやすい……」その性格「HSP」かも! 敏感すぎる人がよりよく生きるためには……

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更新日:2018/12/21

『コミックエッセイ 敏感過ぎる自分に困っています』(長沼睦夫:著、えのきのこ:イラスト/宝島社)

 人間の性格とは実に多種多彩で複雑であり一筋縄ではいかないものだ。なかでも「周りが気になる、傷つきやすい、嫌だと言えない」という項目に当てはまる人は少なくないだろう。とても繊細な性格ともいえるが、当の本人からすればその敏感過ぎる性格ゆえに、とても疲れてしまう。このような人は意外に多く、5人に1人ともいわれる。そのような気質を「Highly Sensitive Person:非常にセンシティブな人(以下HSP)」と呼ぶ。

『コミックエッセイ 敏感過ぎる自分に困っています』(長沼睦夫:著、えのきのこ:イラスト/宝島社)はこのような「敏感過ぎる気質」を解説し、当人が「仕事も人間関係もラクになる方法」を提言している。この手の本は、当事者ほど気負って読み入ってしまいがちだが、それでは却って疲れてしまう。本書はコミックパートと解説パートに分かれているので、まずは気軽に読めるコミックパートを読んでしまうのが良いだろう。HSPと診断された女性が転職を果たし、自身を解放する分かりやすいストーリーでスッキリとした後に、解説を読み込むのがお勧めだ。

 まず、確認しておきたいのはHSPは病気ではないということ。だから、心療内科で診断されても治療を受けるわけではない。そして、発達障害でもない。混同されがちではあるが、一般的に発達障害は他者の気持ちをくみ取り難いのに対し、HSPはくみ取り過ぎて自身が疲れてしまうのだ。それだけに対処法が違ってくるので注意したい。

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 また、本書には自身がHSPに該当するかのセルフチェックもある。23項目の設問のうち、12項目で「ある」と思い当たれば「敏感過ぎる」と考えて良いとのこと。以下に5問抜粋してみる。

・身の回りの微妙な空気の変化が読める
・他人の機嫌に振り回される
・忙しさが続くと、一人きりになれる場所に閉じこもりたい衝動に駆られる
・刺激の強い光やにおい、手触りや音に耐えられない
・どうしたら大変な状況に陥らずに済むか、いつも考えて行動する

 程度の差はあれ、いくつか思い当たることはなかっただろうか。実は小生も13項目当てはまり、その傾向のようだ。普段から小生は「繊細な神経の持ち主」だと自称しているが、誰も認めてくれないのでむしろ嬉しくもなる。だが、その割には普段からテキトーにやっている気もしている……。尚、本書のテストはセルフチェックであり、確定はできないので参考だと思ってほしい。診断は、あくまで医者の仕事である。

 HSPの自覚があればどうすればよいのか。勿論、HSPだからといって卑下する必要はなく、自身の繊細で周囲に気を配れる気質を活かせるならそれに越したことはない。本書コミックパートでの主人公は、不器用ながらも自ら運命を切り開き新天地へ乗り出した。むしろ自身の気質を活かしてステップアップできるのだ。

 それならHSPの人は、どんな仕事が向いているのだろうか。画家や小説家、音楽家にカメラマンといった、感性を活かせる職業が向いているという。とはいえ、それらはそうそう生業にできるものでもない。だが、一般的な職業でも黙々と自身のペースで作業できる部署はあるだろう。もし、現状に押しつぶされそうなら、異動を希望するなり転職するなりして、一歩踏み出してみてはどうだろうか。

 世の中には、HSPとは真逆に鈍感で図々しく無責任な人間もおり、そんな人間は当然ながら信用されない。しかし、HSPはその気遣いと丁寧さから、自身が思う以上に周囲から一目置かれているもの。当事者はなかなか自信を持ち辛く、周りの空気に飲み込まれがちだが、周囲の人たちだって本当は手を差し伸べたいのだ。本書は当事者だけでなく、そんな手を差し伸べようとする周囲の人たちにも読んでほしい。問題点を共有することが、お互いを理解する第一歩なのだから。

文=犬山しんのすけ