「プロ野球死亡遊戯」こと中溝康隆が描く、崖っぷち人生の独白体プロ野球小説!

文芸・カルチャー

2018/12/30

『ボス、俺を使ってくれないか?』(中溝康隆/白泉社)

 2018年1月31日。1つの媒体が幕を下ろした。皆さんはご存じだろうか。スポーツファンに愛された「スポーツナビ+」というブログサイトを。

 ここから現れたスターが一巨人ファンの中溝康隆氏だった。デザイナーとして活動する傍ら2010年よりブログ「プロ野球死亡遊戯」を開始し、累計7000万PVを記録。「超芸術的ゲッツーを打つ男・村田修一」「菅野智之≒指原莉乃説」「内海哲也≒棚橋弘至説」など、斬新な見立てを示す評論で人気を博した。

『ボス、俺を使ってくれないか?』(白泉社)は、プロ野球界を舞台に、12人の選手・監督・記者・ビール売り子ら、それぞれの崖っぷち人生を描いた中溝氏の処女小説だ。プロ野球選手とそこに取り巻く人たちの独白によって構成されている。ぼやき漫談のような調子で、1つの点だった各登場人物が何本もの線となってつながり、交錯し、幾層にも複雑に重なり合うことで、それぞれの人物像や関係性が立体的に浮かび上がってくる。

 ただし、本書の中で飛び交う言葉は下品である。クセの強いリズムで物語が展開していくため、敬遠してしまう読者もいるかもしれない。

 俺は東京でアンコよりアソコをこねくり回していたい。
「痛いの? 気持ちいいの? どっち!」
「イタクシナイデ」「ヤサシクシテ」「オシリハダメ」
「驚くほど自然に3Pに持っていく10の方法」
気軽にタクシー乗ったら抱き寄せられていい雰囲気になってバックでヤラレちゃって。

 子どものころから野球ばかりしてきて、高校卒業と同時にプロ入り。もちろん、大学や社会人から入団した人もいるだろうが、彼らは未だに部活の延長線上のなかで生きている。よく知られた名選手であれば、子どもたちの憧れの存在になるだろうが、800人近い枠の中で毎年100人もの選手が入れ替わる世界の話だ。

 野球本というと野村克也氏や落合博満氏などが書くビジネス書をイメージする人が多いと思う。本書はそのイメージを覆す1冊だ。プロ野球には理屈では表せないような、卑しくて浅ましくて野暮ったい面もあるのだろう。それでも最後まで読んでほしい。野球というスポーツは、どんな環境に置かれた選手であろうと、放った一打によって全てを変えてしまうこともあるのだ。中溝はそれを小説で体現している。

文=梶原だもの