必要なステップは3つだけ! アスペルガー当事者ならではの工夫がつまった、挫折しない「片づけのしくみ」

暮らし

公開日:2018/12/27

『発達障害の人の「片づけスキル」を伸ばす本 アスペルガー、ADHD、LD…片づけが苦手でもうまくいく!』(村上由美/講談社)

 最近、注目されることが多くなった「発達障害」。症状も程度も個人差が大きいため、障害であることに気づかれずに誤解を受けることも少なくない。周囲とのコミュニケーションがうまくいかないことが問題視されがちだが、発達障害の人が抱える問題は他にも様々ある。そのひとつが、「片づけ」だ。

『発達障害の人の「片づけスキル」を伸ばす本 アスペルガー、ADHD、LD…片づけが苦手でもうまくいく!』(村上由美/講談社)では、自らもアスペルガー症候群である著者の村上由美氏が、「片づけが苦手な発達障害の人が、片づけをしやすい環境にするためのしくみを作る」ことを狙いとして、片づけやそれを維持するための方法を丁寧に解説している。

■片づけに必要な3つのステップ

 本書によれば、片づけに必要なステップは以下の3つのみ。

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(1)目的に合ったしまい場所を決める(どこにしまうと使いやすいのか)
(2)しまい場所に入りきる量を決める(どのくらい減らせばいいのか)
(3)しまい場所に合った入れ方を決める(どう入れると出し入れしやすいのか)

 1を実践できれば、使いやすく、散らかりにくくなる。2は、しまい場所から物があふれて散らからないようにするため。3は、取り出しにくい、しまいにくい場所に収納してしまうと、散らかる原因になるので、それを防ぐためのステップだ。

■片づけのルールを決める

 村上氏は、上記のステップを実行するために「片づけのルールを決めていく」ことが重要だと指摘する。まず、自分の行動を振り返り、片づけに関する「問題」と、それが生じる「理由」を書き出す。そこから、「完璧ではなくてもいいから、ある程度片づいた状態を維持する」ためのルールを設定する。ここで大切なのは、理想ばかりを追求するのではなく、現実的に考えること。家族に発達障害の人がいる場合は、その人に配慮したルールにしなければ意味がない。著者の場合は、夫もアスペルガー症候群に加え、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、LD(読み書きの学習障害)の傾向があるため、自分と夫の行動を観察、分析し、ルールを決めたそうだ。

■バッグの中には部屋を片づけるためのヒントが詰まっている

 本書では、部屋の片づけに取り掛かる前に、バッグの中を整理してみることをオススメしている。バッグは部屋の状態を映す鏡のようなもので、ここから「収納の欠点」が見つかるそうだ。さらに、バッグの整理は部屋の整理よりも時間がかからず、達成感が得やすいのもポイント。部屋の片づけの予行演習として、バッグの片づけでコツをつかもう。

 一般的な「片づけ」本と比べると、本書では、発達障害の人向けに、「片づけ」に対する考え方を変える方法や、習慣にして無理なく続けるためのコツが非常に細かく丁寧に説明されている。発達障害の著者自身の経験に基づく内容なので、現実的な提案ばかり。紙を減らすために活用できるデジタルツールなども具体的に紹介されており、最初から部屋全体の片づけが難しい場合でも、少しずつ手をつけられそうだ。

 それぞれの章の最後には、発達障害の人が陥りそうな状況を描いた漫画に加え、それに対する「由美のアドバイス」として、少しでも片づけをしやすくするためにはどうすればいいのかがまとめられている。「自分に片づけは無理」とあきらめかけていた方に、一歩を踏み出す勇気をくれる著者からの優しいメッセージだ。もちろん、本書には、発達障害ではなくても片づけが苦手な方に役立つ情報が満載なので、多くの方に手に取っていただきたい。本書を参考にして、2019年は、「常に“そこそこ”片づいている家」を目指してみては?

文=松澤友子