生きづらい社会から離脱! 家を持たない“くるま暮らし”のお坊さんのストーリー

暮らし

2019/1/12

『社会不適合僧侶の究極ミニマル生活 くるま暮らし。』(静 慈彰/飛鳥新社)

 社会不適合者、コミュ障、少し古いがKY(空気読めない)など、上手に他人に合わせられないと、鬼の首を取ったがごとく批難を受ける。そして、そんな状況を受けて「自分ってダメなんだ…」と自分を責めてしまう人もいるだろう。

 ただ思ったことを言っているだけなのに、ただやりたいことをしているだけなのに、今の世の中はそうした悩みを抱える人を増やす傾向にあるようだ。

 では、悩みを抱えた人間はどうすればいいのか。「みんなが求めるように行動する」という人が多いかもしれない。だが、自分の本心から離れた行動を続けることは自分自身に対してウソをつくことになる。いずれ、全てに疲れてしまい心身共にボロボロになってしまうだろう。

「思い切って、自分をさらけ出していく」こともひとつの手段。上記の対策よりも、自分を大切にしているため、ウソをついて生きているという想いに駆られることはない。しかし、周囲の目がネックだ。自分の気持ちを優先する分、他人との摩擦が生じてしまうだろう。

 生きづらさを解消するための万能薬は存在しない。だが、他人の生き方からヒントを得ることはできる。そんなときに一読したいのが『社会不適合僧侶の究極ミニマル生活 くるま暮らし。』(静 慈彰/飛鳥新社)だ。

 著者は高野山真言宗の僧侶。お坊さんはお寺に住み、あるいは勤務して檀家の人々を迎えると思いがちだが、著者は違う。住居だけでなく、承認欲求、組織のしがらみ、妻などあらゆるモノを捨てて“くるま”で旅をしながら暮らしているのだ。

「トイレやお風呂、洗濯はどうするの?」「仕事はどうしているの?」「どうやって寝ているの?」など、本書では著者・静慈彰さんのくるま暮らしについて書かれているので、気になる方はぜひ本書を読んでいただきたい。

■静さんが“くるま暮らし”を始めた理由とは?

 そもそも、なぜ静さんはくるまでの生活を始めたのだろうか。さまざまな要因はあるものの、「自分を大切にする生き方」を模索した末の決断だった。

 自分のやりたいことを貫き通そうとした結果、理解を得られず勤めたお寺をクビになったり、理不尽な理由から一方的にクビになったりしたこともあった。35歳になって結婚をする静さん。しかし、妻から「夫とはこうあるべき」と束縛され、逃亡を図る。

 逃亡した先は、友人がいるというニュージーランド。そして、くるまの中で生活を営む友人と旅をする。その中で、他人に縛られない生き方のヒントを得て、帰国後、中古のワンボックスカーを購入。終わることのない旅に出た。

■静さんのメッセージ「自分を肯定せよ」

 本書の中で静さんは「自分を肯定せよ」と述べている。家族や恋人、仲間から心無い言葉をかけられても、自分だけは自分の味方でいてあげること。それが静さんにとっての希望なのかもしれない。

 みなさんは自分を肯定できているだろうか。自分なんか…と否定してはいないだろうか。周囲に味方がいないのならば、アナタ自身が自分を味方してあげなければいけない。今一度、自分と向き合う。そんな時間が必要なのではないか。

 他にも、自分自身がもがき、苦しんできた静さんが得たさまざまな考えが、本書にちりばめられている。自分自身に置き換えて、読み進めてもらいたい。

 普通の会社勤めの人は、静さんのようなくるま暮らしは難しい。だが、幸いなことに私の仕事はライターだ。パソコンとネット環境さえあれば、車内でも十分に仕事ができる。

 誰にも邪魔をされず、心地いい波の音を聞きながら、爽やかな風を感じる。左手には淹れたばかりのコーヒーを片手にパソコンとにらめっこ。時には、海沿いを散歩するのもいい。すぐにはできないかもしれないが、フリーランスの方は真剣にくるま暮らしを検討してみてもいいだろう。

文=冴島友貴