コロコロ態度を変える政治家は何を考えている? 2019年予測に必要な指標とは?

ビジネス

公開日:2019/1/23

『明日の日本を予測する技術 「権力者の絶対法則」を知ると未来が見える!』(長谷川幸洋/講談社)

 年末年始や春先など、節目の時期には未来を占いたくなる。何かが変わるとき、それによって人生もまた大きく変わる予感がするもの。先のことを考えるうえで、社会情勢も無視できない。国レベルの未来もまた、私たちの人生に大きな影響を与えるからだ。時流の変わりが早くて先を見通すのは難しいなかで、ころころと態度を変える国や権力者はいったい何を考えているのだろう。

『明日の日本を予測する技術 「権力者の絶対法則」を知ると未来が見える!』(長谷川幸洋/講談社)は、近年の世界の動きについて、表面的な事象だけでなく、権力者たちがどのような思惑で動いているのかを解説する。なぜ北朝鮮があのような行動をとるのか、トランプ大統領の言動の根底にあるものは何かといった見方が分かれば、日本や世界の行く先が予測しやすくなるだろう。

■「政治家が見ている指標」が分かれば、未来予測は可能

 日本の国政について見てみよう。著者はこれまで2017年10月の衆議院選挙についても予測を的中させてきた。著者が参考にしたのは世論調査の内閣支持率である。

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 この選挙前には、希望の党が大変な注目を集め、のちに立憲民主党が急浮上した。だが、結果的には自民党の圧勝。安倍首相はこの選挙に至る衆院解散を決めたときに、それを予想していたのだろうか。著者は「勝利を確信していたからこそ、解散に踏み切った」という。

 安倍首相が衆議院解散を決断する前の世論調査の結果で、内閣支持率は上昇していた。政党支持率についても、自民党の支持率が30~40%前後で高く、民進党は1桁台だった。となれば、首相が「いまが解散のチャンス」と見るのは自然の流れである。

 政治記者たちは官邸中枢や与党幹部たちの言動から情報を追い求めているが、当の政治家が見ているのは普通の国民である。これは当然で、国民の意見を無視して政治はできないからだ。そんなことをすれば、政権を失うハメになる。だから、政権運営に関与する大物になればなるほど、政治家は国民の動向に細心の注意を払っているという。新聞やニュースにおける報道の温度とは、多少のギャップがあるのだ。

 では、議論の渦中にある「憲法改正」の行方についてはどうだろうか。著者は、「安倍首相は憲法改正をやるべきと考えている」とみるが、憲法改正は絶対に失敗が許されない政治課題である。また、政治家にとって重要なのは、あくまで「実際にやれるかどうか」。そして「結果を残せるか」である。

 安倍首相が目指しているのは、国民の考えをどう受け入れ、現実の結果に結びつけるかという、現実主義に基づく改憲路線である。それが自衛隊明記案という安倍提案につながった。国防軍提案の方が理にかなっていたとしても、理想で政治は動かず、結果的に現状維持になってしまうからだ。

■浮き足立った理想論ではなく、現実主義で見えてくるもの

 著者はあとがきで「明日の日本を予測しようとすれば、現実主義に立つ以外にない」と述べている。特に私たちが直接空気感を得られるわけではない諸外国の動きの予測において、「こうあるべき」とか「こうだったら素晴らしい」といった理想論や期待で物事を見るのは危うい。各国の権力者が自国第一主義に立つなか、理想ばかりにこだわっていては情勢判断を誤ってしまう。

 未来を予測するとき、理想ではなく現実にこだわるのは夢がないようにも思える。だが、本書を通せば、理想論ではなく現実主義から物事を見ることの重要さに気づくだろう。

文=高橋輝実