「大統領、そのツイートはやめてください!」側近達が暴露する“恐怖の男 トランプ”の実態

社会

2019/2/21

『FEAR 恐怖の男 トランプ政権の真実』(ボブ・ウッドワード:著、伏見威蕃:訳/日本経済新聞出版社)

 今、世界中でもっともその発言が注目されている人物といえば、アメリカ大統領ドナルド・トランプで間違いないだろう。演説での言葉だけでなく、彼の個人的なツイッターまでもが大きな力を持ち、一国、一企業へと大きな影響を与える。

 ニュースを通じて日本から見ているだけでも、トランプ政権の持つ力の強大さはよく伝わってくるだろう。それでは、その政権運営は、どのように行われているのか。本書『FEAR 恐怖の男 トランプ政権の真実』(ボブ・ウッドワード:著、伏見威蕃:訳/日本経済新聞出版社)を読めば、それが非常に危ういバランスで成り立っていることがわかる。

 著者は、ジャーナリストのボブ・ウッドワード氏。かつてウォーターゲート事件をスクープし、ニクソン大領領退陣のきっかけを作ったことで知られる伝説のジャーナリストだ。本書は、トランプの言動を間近で見てきた人々に数百時間のインタビューを行い、それを物語風に語る形式になっている。そのため、日本の報道からなかなか見えてこない、政権内部のリアルな動きを垣間見ることができる。

■「これは私のメガホンなんだ」 過激なツイートをやめないトランプ大統領

 過激さが衰えることを知らないトランプ大領領のツイート。当然、大統領の側近たちは、彼にツイッターの使用を控えるように何度も進言している。だが、トランプは聞く耳を持たない。彼の主張はこうだ。

「これは私のメガホンなんだ」トランプは答えた。「フィルターをまったく通さずに、国民にじかに語りかける手段なんだよ。雑音に邪魔されない。フェイクニュースに邪魔されない。コミュニケーションをとる方法はこれしかない。(中略)なにかをツイートすると、それがメガホンになって、世界中に聞こえる」

 トランプ大統領の主張にも一理あるのだが、不用意な発言は政権にとって命取りになりかねない。そこで、側近たちは、トランプのツイートを規制するために、緊急対策として委員会を立ち上げたという。委員は、トランプが気に入りそうなツイートの原稿を書き、トランプの思いつきを校閲し、事実の正確さや、政権にとってプラスになるかどうかを吟味する。だが、トランプはそれらをほとんど無視し、好きにやっているようだ。

ツイートは、大統領の職務の片手間ではなかった。それが中心だった。

 トランプは、ツイッターを戦略的に利用しようとしている。彼は、20万以上の“いいね”がもらえたツイートをプリントアウトするように命じ、成功するツイートは何が優れていたのかを分析しようとした。やはりそれは、ショッキングな内容のものが多かったという。

 トランプと側近たちの攻防は、いたるところで行われている。大統領秘書官だったポーターは、自分の仕事について「彼(トランプ)のものすごく危険な思いつきに対応して、名案ではなかったかもしれないと思い直すような理由をいくつも教えることだった」と語る。本書によれば、大統領が一時の感情で書いた書簡の草稿を取り上げ、忘れさせる…というようなことも日常茶飯事なのだとか。こうした大統領と側近のやりとりは、日本の常識では考えられない。だが、アメリカでは実際に起きている。私たちは、その現実を知る必要がある。

文=中川 凌