人前で緊張、人との会食が苦手…その症状、「社交不安障害」かもしれません!

健康・美容

2019/2/21

『社交不安障害 理解と改善のためのプログラム』(岡田尊司/幻冬舎)

 突然だが、あなたは人前で話すときや人付き合いの中で、命が縮むような不安やストレスを感じたことはないだろうか。「プレゼンや会議の度に気持ち悪くなってしまう」「頭が真っ白になり、不安になる」「自然な人付き合いができない」…そんな症状に悩まされている方は、もしかしたら「社交不安障害」かもしれない。

「社交不安障害」とは、頻度の高い精神的な困りごとのひとつ。海外のデータによると有病率は1割を超えているが、日本人はシャイな性格の方が多いため、有病率はもっと高い可能性もあるそうだ。また、社交不安障害は限られた場面だけでなく、生活や人生に支障を及ぼすため、当人は消極的な生き方を強いられていることも多い。

 だが、自分を苦しめる不安の正体を知り、トレーニングを積んでいけば「社交不安障害」を改善することは可能だという。それを学べるのが『社交不安障害 理解と改善のためのプログラム』(岡田尊司/幻冬舎)だ。

■「社交不安障害」はもともと別の名称で呼ばれていた

「社交不安障害」という病名に馴染みのない方は多いはず。しかし、「対人恐怖症」や「社会不安障害」といった病名ならば、耳にしたことがあるのではないだろうか。社交不安障害は長きにわたり、そうした名称で呼ばれてきた症状を指す。友人付き合いは普通に楽しめるのに、大勢の前で話すことだけが苦手な方もいるため、名称が変わってきたのだ。

 症状には個人差があり、人前で話すだけでなく、視線に対しても過敏に反応してしまったり、人前で食事をすることを苦手に思ってしまったりする方もいる。この場合、単なる恥ずかしがり屋のレベルではなく、生活に支障をきたすほど、強い不安感を抱いてしまうのが特徴だ。

 また、社交不安障害は生活の仕方が変化すると病気として表面化することもあるため、境界線は曖昧である。そのため、自身が病気であることに気づかず、激しい自己嫌悪感に悩まされていることも少なくない。

 実は筆者も19歳の頃、精神科で社交不安障害と診断されるまで、言葉にできない生きづらさと強い自己嫌悪感に苦しんでいた。筆者の場合は人前で話す以外に、お店の店員さんや友人の視線が自分に向けられる時にも激しい恐怖を感じた。「相手はこちらをどう思って見ているのだろう」「変だと思われていないか」…そう考えると、自分の服装や表情はもちろん、ひとつひとつの仕草までもが不安になり、人と関わること自体が怖く感じられた。

 一番苦手だったのが、レジで会計をする瞬間。会計時には必ず対面しなければならないため視線が気になってしまい、レシートやおつりを貰うときに手が震えた。すると、今度は手の震えが気になり、余計に人と対面することが怖くなってしまったのだ。人の視線を気にしすぎてしまう自分が情けなくも感じられ、「どうして他の人と同じようにできないんだろう…」と苦しかったのを覚えている。

 だからこそ、自分が社交不安障害という病気であることを知れたときは、ホっとした。戦うべき相手が見えたことで、「自分はおかしくなかった」と思うことができたのだ。

 きっと筆者のように、見えない恐怖と闘っている方は多いはず。そんな人にこそ、本書を手に取り、まずは社交不安障害とは、どんな病気であるかを知ってみてほしい。

■苦手な状況を回避しないことが克服への近道に

 社交不安障害の人は、知らず知らず自分に完璧であることを課しているという。緊張せず、おもしろく、魅力的に話し、みんなから好かれなければならない…という思いが強いからこそ、「失敗したらどうしよう」という不安が募ってしまう。

 岡田氏いわく、社交不安障害の人がこう考えてしまうのには、根拠のない確信が関係しているという。

“自分はつまらない、人に笑われるような人間だという根拠のない確信である。その否定的な評価から自分を守るため、他者に良く思われているように完璧にふるまわなければならないという基準が作られてしまったのだ”

 では、こうした気持ちをとっぱらうには、どうしたらいいのか。そのひとつの方法として岡田氏は、回避せずに苦手な状況に飛び込んでいこうと諭している。

 自分にとって苦しい状況は、誰だって避けたいもの。しかし、避けてばかりいると悪循環のサイクルが生まれ、そのシチュエーションに対する苦手意識が逆に強まってしまう。反対に、勇気をもって苦手なシチュエーションに飛び込んでいくと、好循環のサイクルが生まれ、社交不安障害の克服が期待できるようになるのだ。

 実際、筆者も社交不安障害に悩んでいた当時、「会計」という苦手なシチュエーションを克服するため、あえて買い物をし、状況に慣れようと努力した。手が震えることが恥ずかしく感じられた時は、「それでも買い物はできた」と自分を褒め、震えが弱まった時は「やればできるじゃん」と、自分を励ました。すると、1年経つ頃には、手の震えもほとんど見られなくなり、病気が発症する前と同じような生活を送れるようになった。社交不安障害の治療は根気がいるものだが、諦めないで自分らしくいられる人生を取り戻してみてほしい。

 社交不安障害は自分の行動範囲を狭める、厄介な病気だ。だが、世の中には社交不安障害を抱えながら表舞台で活躍している人も多い。

“大切なのは、社交不安障害を抱えていても回避性の強まった生き方に陥らないということだ。社交不安障害のために、自分の可能性ややりたいことを諦める必要はないのである”

 自身も赤面恐怖症や視線恐怖に苦しんできたという岡田氏のこの力強い言葉は、現在社交不安障害で悩んでいる方の背中を押してくれる。本書には症状を改善する具体的な対処法が他にもたくさん記されているので、ぜひ人生を変えるきっかけとして活用してみてほしい。

文=古川諭香