西尾維新ファン待望の最新作『混物語』は、なんと他シリーズとのコラボ小説! 阿良々木くんが出会うのは…?

文芸・カルチャー

2019/2/27

『混物語』(西尾維新/講談社)

 西尾維新氏の代表作<物語>シリーズの最新刊『混物語』(講談社)が発売された。『終物語』が刊行されても当然のように続きが出る“なんでもあり”な本シリーズに、また奇妙な1冊が加わる。その内容は、“混物”というタイトルの通り、著者が手掛ける別シリーズとのコラボ小説だ。今をときめくあの人から、懐かしのあの人まで、西尾維新氏が生み出してきた個性的なキャラクターたちが続々と登場する。収録されているのは、元々『傷物語』劇場版の来場者特典として配布された12編に、書き下ろしの3編を加えた15編。気になる目次は以下の通りだ。

第忘話 きょうこバランス 
第強話 じゅんビルド 
第法話 のみルール 
第眼話 まゆみレッドアイ 
第病話 くろねこベッド 
第血話 りすかブラッド 
第刀話 ひていクリア 
第殺話 いおりフーガ 
第軍話 しおぎレンジャー 
第招話 あかりトリプル 
第喰話 りずむロックン 
第大話 みここコミュニティ 
第英話 くうインビジブル 
第騙話 らいルーレット 
第終話 まごころフィニッシャー

<物語>シリーズの各話タイトルは、「(下の名前)+単語」になっているから、筋金入りの西尾維新ファンならば、誰が登場するのかはすべてわかるだろう。本稿では、大人気のあの人が登場する短編の内容を少しだけ紹介する。

■ベンチに横たわってすやすやと寝ていたのは…忘却探偵・掟上今日子!

「第忘話 きょうこバランス」に登場するのは、白髪の名探偵・掟上今日子。彼女は、眠るたびに記憶がリセットされてしまう“忘却探偵”であり、それ故にどんな事件も1日以内で解決する“最速の探偵”でもある。ある日、浪白公園を訪れた阿良々木は、ベンチで気持ちよさそうに眠る白髪の美女と遭遇する。「ところでここはどこでしょうか?」――眠りから覚めたばかりの今日子さんは、当然ながら何も覚えていない。だが、彼女の身体には、「現在仕事中。」というメモが残されていて…。果たして、今日子さんは、どんな事件に巻き込まれているのか? “忘却探偵”だからこその状況をうまく利用した、上質なミステリー短編に仕上がっている。

 今日子さんは、『掟上今日子の備忘録』(講談社)から始まる<忘却探偵>シリーズの主人公だ。2015年に新垣結衣主演でドラマ化もされた人気作で、2018年には文庫版が刊行されている。その他、デビュー作の<戯言>シリーズとその関連作からはもちろん、2018年完結した<伝説>シリーズ、<世界>や<りすか>などの懐かしいシリーズからも多数のキャラクターが出演する。

『混物語』は、長年西尾維新作品を愛読してきた読者への最大級のファンサービスであると同時に、<物語>シリーズの読者が新たなシリーズに手を伸ばすきっかけにもなる。「第強話 じゅんビルド」で人類最強の請負人・哀川潤の破天荒さを見れば、<最強>シリーズが読みたくなるだろうし、「第法話 のみルール」で魔法少女・地濃鑿(ちのう のみ)の白々しさを見れば、<伝説>シリーズが読みたくなるはずだ。本作を楽しむために必要なのは、「西尾維新が好き」という気持ちだけである。

文=中川 凌