いろんな“むれ”に笑って感動! 人と違うって、おもしろいことかもしれない。お笑い芸人・ひろたあきら作の絵本

出産・子育て

公開日:2019/3/4


 人と違うって、おもしろいことかもしれない。そう子どもに語りたくなるような絵本が登場しました。『むれ』(KADOKAWA)は、よしもと所属のお笑い芸人・ひろたあきらさん作の探し絵本です。本の中にはさまざまな“むれ”が登場し、そこには一つだけ“仲間はずれ”が。子どもは、その“仲間はずれ”を指さしで探しながら、遊ぶことができます。

■透明じゃない透明人間!?

 飛ぶ鳥たちの“むれ”では、一羽だけ走っている鳥が仲間はずれ。モコモコの羊たちの“むれ”では、一匹だけ毛がないツルツルの羊が仲間はずれ。探し絵本といっても、色や形の違いだけではないのが、おもしろいところ。“鳥が飛ばずに走るなんて!”“同じ魚なのに、なんで一尾だけ骨!?”と、先入観を覆されます。


 さらにおもしろいのは、途中から大喜利みたいな“むれ”が出てくること。「透明人間のむれ。一人だけ透明じゃありません」という“むれ”に描かれているのは、肌色の人間が一人だけ。ということは、その周りはみんな透明人間!? 思わず、“仲間はずれじゃないほう”を想像してしまうページです。透明人間ってどんな姿なのか、子どもと一緒に想像してみたいですね。

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 そんな笑える“むれ”もいれば、ちょっと切ない“むれ”もあります。「雨のむれ。一粒だけ誰かの涙です」。もし雨の中で涙を流している人がいるとしたら…。シンプルな絵と文から、そんなストーリーが広がっていくようです。だけど、絵に描かれた水滴はどれも似たような色だし…。いや、同じように見えて、どこか少し違うのかも。答えがあるようで、ないような。どの水滴が“涙”だと思ったのか、その理由を親子で語り合うのも楽しそうです。

■鳥は地面を踏みしめてみたかった


 終盤に出てくる“むれ”では、無数のアリたちが歩いています。でも、その中で一匹だけ、みんなと違うほうへ歩いていきます。すると、どうでしょう。歩いていった先で、富士山みたいなアリや、おにぎりの形のアリ、プリンの形のアリなど、ちょっと変わったアリたちに出会います。

 おにぎりみたいなアリなんて、ヘンテコですよね。でも、よく見ると、かっこよく思えてくるから不思議。もしかしたら、アリだけど大好きなおにぎりになってみたかったのかもしれない、そう思えるからでしょうか。さっきの鳥も、地面を踏みしめてみたかったのかもしれないし、骨の魚は身軽になって泳いでみたかったのかもしれない。

 この本を子どもと読む時は、「“仲間はずれ”はどうしてこうなったんだろうね」「○○(子どもの名前)だったらどうしたい?」と話しかけてみたい。みんなと同じじゃないかもしれないけど、“仲間はずれ”たちはなんだかかっこいいのです。

■人と違うって、おもしろいことかもしれない


 子どもには、お友だちと自分を比べてしまう時期があるようです。もし、お友だちと違うところが見つかったら? それはきっと素敵なことだけど、子どものうちはそう思えないこともあるかもしれません。どうしても目立ってしまい、誰かからひどいことを言われるかも…。でも堂々としていれば、むしろかっこいいし、おもしろい出会いが待っているかもしれません。

 作者のひろたさんが、読み聞かせで子どもたちに広めながら、ようやく出版にこぎつけたという本書。驚くような発想力で、「みんなそれぞれでいい」「変わっているからこそおもしろい」ということを教えてくれます。愛嬌たっぷりの絵は親しみやすく、読み聞かせで“子どもがむらがる”という話に納得。ププッと吹き出しながら楽しんだ後は、人と違うってどういうことなのか考えてみる。そんな遊び方もできる絵本です。

文=吉田有希