世界的流行「こんまり流片づけ術」が今度は海外のお葬式を変えていく!?

社会

2019/3/16

『世界のすごいお葬式』(ケイトリン・ドーティ:著、池田真紀子:訳/新潮社)

 2010年代はじめに「終活」や「エンディングノート」という言葉が流行語大賞にノミネートされ、いまやこれらが「エンディング産業」と括られるほど、死後の「見せ方」に工夫を凝らすことは一般的になった。『世界のすごいお葬式』(ケイトリン・ドーティ:著、池田真紀子:訳/新潮社)は、故人や遺族の希望に沿った葬儀を実現する会社・アンダーテイキングLAを設立したというアメリカ人の著者が、世界各国を旅して見てきた葬送墓制をベースに、変わりゆく現代人の死生観を描く1冊だ。

■自分が死んだらどうしてもらいたい? 考え直すきっかけに

 本書の特徴は、「この国にはこんな儀式がある」と雑学的に各国の葬儀や墓制を紹介していくのではなく、アメリカのいくつかの場所や、インドネシア・メキシコ・スペイン・日本・ボリビアを旅する紀行文の中で、各地の古来の慣習や価値観について描写していく点にある。「葬儀ディレクター」という資格を有する著者は、自社を設立する前にもいくつかの葬儀社で働きながら、商業的・高額・画一的なアメリカの葬儀ビジネスに疑問を抱いていたという。

“なぜ死の話題を避けるのか。死んだらどうしてもらいたいか、尋ねることに抵抗を感じるのはどうしてなのか。逃げていても決して自分のためにはならない。かならずやってくる終わりについて話し合うことを避けていると、結果、金銭的な負担は増し、死を悼むゆとりは奪われる。”

 現代のアメリカでは、自然のプロセスを用いて遺体を堆肥化するまで見届ける「リコンポジション(分解生成)」というサービスに一定のニーズがあるという。日本においても、「自然に戻る」ことは、子孫が墓の跡継ぎを心配するよりも賢明な選択になる場合もあるかもしれない。

“葬儀ディレクターとしての経験から言えば、遺体を清めたり、遺体に寄り添って過ごしたりすることは、悲しみのプロセスにおいてひじょうに重要な役割を果たす。遺体を不吉な物体として見るのではなく、故人の魂の容れ物だった美しい“抜け殻”として慈しむよう遺族を導くのだ。”

 こういった観点から、ある人が亡くなってから荼毘に付すまでの時間をじっくりと一緒に過ごすことができるという神奈川県の「ラステル」(ラスト・ホテルの略)という施設について、著者は「こういった施設がアメリカにも必要だ」と評価している。

■世界的流行のこんまり流片づけ術が、お葬式のあり方も変えていく?

 加えて、日本についての章では、最近Netflix番組「Tidying Up with Marie Kondo」でも大ブレイクとなっている「こんまり」こと近藤麻理恵さんの片づけ術にも言及している。サイズが合わなくなったセーターにお礼を言って捨てること。これも「小さな死」だというのだ。実際、何不自由ない暮らしをしているはずのハリウッドセレブが、魔法にかけられたように「こんまりメソッド」に魅了され、時には号泣する様子は同番組で見ることができる。

 葬儀・墓制に関する「当たり前」は、いつまでも「当たり前」であるわけではなく、少しずつ変わりつつある。そして、「死」について深く考えることは、より豊かな「生」につながる。本書は、現代社会においてわざわざ「見せ方」を考えなければいけなくなった「死」を、「生」と一連のものとして捉える手助けをしてくれる。

文=神保慶政