美しい双子が「ふたりでひとり」を演じる理由は――!?『坂本ですか?』に続く不穏でシュールな物語『ミギとダリ』

マンガ

公開日:2019/3/23

『ミギとダリ』(佐野菜見/KADOKAWA)

 昨年5月、『坂本ですが?』で大きな話題をさらった佐野菜見先生の最新作『ミギとダリ』(KADOKAWA)が発売された。見る者全てを魅了する、クーレスト高校生・坂本くんのスーパースタイリッシュな生活が描かれている『坂本ですが?』に、心を奪われた人は多いだろう。

『ミギとダリ』は、『坂本ですが?』のシュールさと華麗さを受け継ぎつつも、不気味で不穏な空気が根底に漂う作品である。なぜなら、主人公の双子の少年・ミギとダリは、常に「ふたりでひとり」を演じているからだ――。

 本書の舞台は、アメリカの郊外をモデルに造られた神戸市北区のオリゴン村(……もはやこの時点で、軸足が定まらない舞台設定に胸騒ぎがするのだが、ひとまず話を先に進めよう)。

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 物語は1990年の2月、裕福な住民が暮らすオリゴン村に“ひとり”の美しい少年がやって来るところから幕を開ける。少年の名は秘鳥(ひとり)。子供のいない老夫婦に養子として温かく迎えられた。

 夫婦はさっそく、子供部屋の飾りつけを一緒にしようとするのだが、秘鳥はなぜか「ぼくに任せてもらえませんか?」とお願いする。夫婦が部屋から出て行った後、大きな段ボールから現れたのは、秘鳥そっくりの少年だった。

 施設からやってきた彼らは、実はミギとダリという双子。彼らはある恐るべき目的のため、「ふたりでひとり」を演じることを決意して、オリゴン村にやってきたのである。

 二人は双子であることがばれないよう、細心の注意を払いつつも、時には驚くほど大胆な行動に出る。食事中、一人はお行儀良くナイフとフォークを使って食べるが、もう一人はテーブルの下に忍び込み、密かに差し出されたパンを、犬のような格好でガツガツと食べる。また、夫婦からの信頼を得るため、母親とは一緒にチェリーパイを作り喜ばせ、父親には二人がかりで、細かな注文にも見事に応え「門外不出の才能だ」とも言わしめた、神がかった肩もみを披露するのだ。

 双子は1巻終盤で明かされる“想像以上に重い理由”のため、このような生活を選択するに至ったのだが、まだ13歳の子供のためか、世間の常識に疎い部分や、老夫婦の愛情に、いつの間にか感じ入る様子も見受けられた。

 双子のシュールでミステリアスな生活は、2巻では更なる広がりを見せる。老夫婦に勧められ加入したボーイスカウトで、友達をつくり、オリゴン村の家々へ正攻法で侵入し、ある物を探そうと奮闘する。

 本書は、双子以外にも、登場するほぼ全ての人物が変わり者だ。優雅なオリゴン村に潜む黒い影の事実が、少しずつ見えてくるに従って、背筋が寒くなる。ホラーなのかサスペンスなのかギャグなのか、今ひとつ判然としないが、きっとそこがこの作品の一番の魅力でもあるのだろう。読む者全てを驚嘆させ、不可思議な世界に引きずり込んで離さないマンガである。

文=さゆ