ラピュタパンに小津安二郎のとんかつ…単なるグルメ漫画じゃない『シネマごはん』がしみる!

マンガ・アニメ

2019/6/8

『シネマごはん』(福丸やすこ/少年画報社)

 映画の楽しみ方は人それぞれ。登場人物に感情移入したり、ストーリーに魅了されたり、好きな俳優の演技に集中したり……それぞれの観点で、映画を味わっていることでしょう。なかには、作中に登場する“ごはん”に注目している人もいるのでは? 『シネマごはん』(福丸やすこ/少年画報社)は、その名のごとく映画の食事にスポットを当てた作品です。

 主人公の町野あかりは、映画好きだった祖父ゆずりの映画好き。彼女は、祖父が亡くなったいまも“映画に登場するおいしそうな食べ物を探す”という趣味を満喫しています。

 同作には『幸福の黄色いハンカチ』(1977年)で高倉健さん演じる「島 勇作」が食べるカツ丼や、2013年公開の青春映画『横道世之介』のなかで主人公の横道世之介(高良健吾)と、ヒロイン祥子(吉高由里子)が初デートで食べたハンバーガーなど、14本の映画作品を彩る“シネマごはん”が登場します。

 そのうちのひとつが、スタジオジブリのアニメ作品『天空の城ラピュタ』(1986年)のシネマごはんとして描かれた「ラピュタパン」。ラピュタパンとは、主人公の少年・パズーとヒロインのシータが、洞窟の中で分け合って食べた目玉焼きトーストの俗称。

 トーストにのせた半熟の目玉焼きをツルッと食べてから、トーストをかじるパズーとシータの至福の表情を見て「ラピュタパンはよほどおいしいに違いない!」と感じた人もいることでしょう。

『シネマごはん』のあかりも、ラピュタがテレビで放送される日は「特別な日」として、ランチの時間に自作したラピュタパンを頬張ります。そして、ラピュタパンを堪能した彼女は、幼い頃に押入れの中で“一人ラピュタごっこ”をして遊んだときのことを思い出します。

 朝食のトーストと目玉焼きとジュースを持って、おもちゃのランプを押入れに設置。そしてひとり、ラピュタのワンシーンを再現します。しかし、目玉焼きがうまく食べられずにジュースもこぼしてしまい、押入れを汚して叱られてしまったあかり。

 ベランダで落ち込む彼女と一緒にラピュタパンを食べてくれた亡き“じいちゃん”との記憶も蘇り、センチメンタルな気分に浸ります。特別な日のラピュタパンが、あかりとじいちゃんの思い出をつないでくれたのです。

『シネマごはん』は、映画のごはんに思いを馳せるだけでなく、一本の映画ごとに刻まれた“あかりの思い出”をひとつひとつひもといていく物語でもあります。

 本作に出てくるシネマごはんを食べるもよし、自分の好きな映画のシネマごはんを作ってみるもよし。映画の新たな楽しみ方を提案してくれる一冊です。

文=丸井カナコ