嫌なヤツは「非表示」にして消す! 街中に現れる「殺」の意味は? 青春ミステリー『君の××を消してあげるよ』

文芸・カルチャー

2019/6/18

『君の××を消してあげるよ』(悠木シュン/双葉社)

 面倒な相手からの連絡を指先ひとつで「非表示」にする。そんなスマホ世界での日常を、現実世界で実行できたら、どんなにラクだろうか。厄介な人とのやりとりをすべて目の前から消し去り、目をそらしたい。世の中の煩わしいもの全部「非表示」にして目の前から消すことができれば、もっと心地よく日常が送れるような気がするのに、現実世界はどうしてそんなに簡単にはいかないのだろう。どうして現実世界に悩みは尽きないのだろう。

『君の××を消してあげるよ』(悠木シュン/双葉社)は、世界を“非表示”にする青春ミステリー。作者・悠木シュン氏は、第35回小説推理新人賞を受賞し、『スマドロ』で作家デビューした人物。ミステリーを得意とする作者が描くからこそ、この作品は、青春の甘酸っぱさやほろ苦さを感じさせながらも、読み進めずにはいられないハラハラドキドキさせられるシリアスな展開が続いていく。青春には、悩みがつきものだ。将来の進路、大人たちとの軋轢、友人との関係、特別な誰かに抱く恋心…。そして、この物語の主人公は、過去の出来事にしばられ、そこから抜け出す方法を見出せないまま日々を過ごしている。

 主人公は、バトン部所属の中学3年生、小笠原幸。彼女の所属するバトン部のコンクール出場について、地元のテレビ局が密着取材をすることになった。取材に向けて士気が高まるバトン部の部員たち。だが、幸は、ひとりバトン部を退部することを決意していた。そんなある日、幸は、話したこともないクラスメイトのクラゲこと海月慶人が幼馴染にカツアゲされているのを目撃する。正義感の強い彼女は思わず、カツアゲを止めに入る。それをきっかけにクラゲと言葉を交わすようになるのだが…。

 この本は、物語のはじまりからして不吉なオーラが漂っている。街中の至るところに「殺」という文字が書かれているし、幸の、他人に言えない過去の出来事は、その苦悩を知れば知るほど、読者の胸をキュッと締め付ける。そして、クラゲという存在は、物語にさらなる不穏な展開を巻き起こしていくのだ。

スマホにあるでしょ。「非表示」機能。それと一緒で、世の中の煩わしいもの全部「非表示」にして目の前から消すんだ

 不穏なセリフと展開に、ドキドキが止まらない。4年前の出来事をきっかけに、教師とも親友とも心通わせることができない幸は、クラゲとともに、ある計画を実行することになるのだが…。

「青春の甘酸っぱさ、ほろ苦さ」×「ミステリー」。思いがけないシリアスな展開に背筋が凍ったり、次第に周囲に対して心を開いていく幸の姿に、ほっとしたり…。『君の××を消してあげるよ』というタイトルの「××」とは何を示すのか。ページを読む手を止めることができなくなる青春ミステリーをぜひあなたも体感してほしい。

文=アサトーミナミ