トラウマ級のサイコパスがあなたの隣にも! 凶悪事件を引き起こし映画に描かれたサイコパス

文芸・カルチャー

2019/7/1

『サイコパスの手帖』(春日武彦、平山夢明/洋泉社)

「サイコパス」とは他者への愛情や思いやりが欠如していたり、一般の人と比べて著しく道徳観や倫理観に欠けたりする人のこと。そんな“サイコパスの解説”を私たちはこれまでに何度目にしてきたことだろう。さまざまな関連書籍も多く刊行されている。だが、『サイコパスの手帖』(春日武彦、平山夢明/洋泉社)は、他のサイコパスの関連本とは一線を画すものだ。

 本書は2017年に刊行された『サイコパス解剖学』(春日武彦、平山夢明/洋泉社)の第2弾。精神科医・春日氏と稀代のホラー作家・平山氏という専門分野の異なるふたりが、お茶の間を震撼させた犯罪事件やトラウマになりそうなレベルの恐怖映画におけるサイコパスについて語りながら、なぜサイコパスが存在するのかについて考察を展開する。

■サイコパスは創作物の中にも現実にも存在する

 サイコパスをテーマにした書籍は、フィクションでもノンフィクションでも、シリアスな印象のものが多い。しかし、本書では気心がしれた二人の語り口はある意味軽快でもある。そのため、読み手である自分も雑談の輪に交じっているような感覚で、スラスラと読み進めることができるだろう。専門書とは違い、対談を通じてサイコパスをひもとく。それが本書の特徴であり、凄みでもある。

 サイコパスはもともと特異な人なのだろうと思っている方は多いように思う。しかし、必ずしも持って生まれた特性ではなく、抑圧された自我や育った環境によって人の人生の歯車はズレてしまう…。本書を手に取ると、そう思わずにはいられなくなる。

■トラウマレベルな衝撃映画『鬼畜』は必見

 本書を手がけた春日氏と平山氏は、どちらもその道の専門家としてはユニークな経歴の持ち主だ。現在、精神科医である春日氏は、もともと産婦人科医。6年間産婦人科医を務めた後、障害のある子どもを産んだ母親の心のフォローを機に精神科医となった。

 対して、平山氏はかつて「デルモンテ平山」名義で数々の映画やビデオ作品の批評をメインに執筆してきた小説家。今年7月5日からいよいよ映画が公開される『ダイナー』は、彼が生み出した人気作だ。

 それぞれの経歴の中で人の命について、また人の陰の部分にも目を向けてきたふたりだからこそ解き明かせる、“人が道を踏み外してしまう理由”が、本書には収められている。

 サイコパスをひもとく材料として2人が紹介する、『シャイニング』『羊たちの沈黙』『何がジェーンに起ったか?』などといったサイコ映画はどれも、一度見たら忘れられなくなるほど衝撃的だ。

 中でも、松本清張の短編小説「鬼畜」を実写化し、人の狂気が表れる瞬間をまざまざと映し出した、映画『鬼畜』はぜひとも鑑賞してほしい作品だという。社会に暮らすひとりとしてそれなりの良心や優しさを備えていたはずの登場人物たちは、タイミングや運の悪さで「その場しのぎ」の選択を優先。結果的に、人間としての倫理観よりも「鬼畜」と呼ぶべき醜悪な自分勝手さが立ち現われるストーリー展開からは、目が離せなくなるだろう。

 しかし、本当に怖いのは二人が紹介するトラウマ級に恐ろしい映画に映し出されているサイコパスはフィクションだけのものでなく、現実社会でも出逢う可能性がある存在だということだ。実際、本書で紹介されている映画の中には、実在したサイコパスをモデルにしたものもあるそうだ。

 ふだんは優しい顔を見せ親切な対応をしてくれる身近な人が、もしもサイコパスだったら、自分はどうしたらいいのだろう…。そして、自分は無意識のうちにサイコパスになっていないだろうか…。読後のあなたはきっとそんな問いを自分に投げかけたくなるはずだ。

文=古川諭香