季節の到来を告げるフルーツの魅力がたっぷり詰まった一冊

食・料理

2019/7/29

『フルーツパトロール』(伊藤まさこ/マガジンハウス)

 季節ごとに出回る旬のフルーツ。春のイチゴに初夏のあんず、秋は栗、冬はりんごと、年間を通じてたくさんのフルーツを楽しむことができる。みずみずしく甘いフルーツはそのまま食べることが多いが、世の中にはフルーツを使ったスペシャリテが実に多く存在している。本書『フルーツパトロール』(伊藤まさこ/マガジンハウス)は、人気スタイリスト伊藤まさこさんおすすめのフルーツパーラーやフルーツのおいしいお店、果樹園、フルーツレシピなどが紹介してあるフルーツの魅力が満載の一冊となっている。

「フルーツパーラー」というなんともかわいらしいネーミングに魅かれる人は多いのではないだろうか。私にとってフルーツパーラーとはよそ行きの、ちょっとハードルが高い場所だ。おいしいフルーツが美しく陳列され、お使い物を探すときにまさにぴったりの場所。まず、伊藤さんがおすすめしているのが「銀座千疋屋銀座本店」の2階にあるフルーツパーラーで注文できる「銀座パフェ」。新鮮なフルーツがたっぷりとのった気品ある佇まいのパフェは、銀座にふさわしい一品として紹介している。お店を訪れたら欠かさず、お土産にフルーツサンドも購入するという。鮮やかな水色に真っ赤なバラがあしらわれた銀座千疋屋の包装紙に包まれて、特別感のあるお土産にもなるだろう。

 東京都目黒区にある「果実園リーベル」のパフェは、8割がフルーツ、2割がクリームというとても贅沢な一品。パフェ一つに使用されるのは、ぶどう一房や、桃なら2個、イチゴ1パックなど想像を絶する量。その見た目にも圧倒されるが、フルーツの道50年という社長の目利きで選ばれたおいしいフルーツを堪能できる特別な場所なのだ。他にも、「はまの屋パーラー」や「銀座スカイラウンジ」「フルーツパーラーヤオイソ」「フルーツパーラークリケット」など、東京と京都の名店がたくさん紹介してあるので、ガイドブックとして活躍してくれるだろう。

 スーパーやデパートなどでいつでもフルーツを購入することができるが、フルーツがどうやって作られているのかを実際に目にしたことがある人はどれくらいいるだろう。本書では、伊藤さんが実際に全国の果樹園を訪れて絶品フルーツを紹介している。中でも印象的だったのが、熊本県にある「西田果樹園」。晩柑やサマーレッド、プラムなど、こちらの果樹園で栽培されているフルーツは30種類以上にも及んでいる。西田果樹園は日本では珍しく、月齢のリズムに合わせた収穫や草刈り、剪定管理などを実践している果樹園だ。季節の「月読み果実」は全国から問い合わせがあるほどの人気ぶりで、地元熊本の人気カフェ「フラベド」では、西田さんが栽培したフルーツの絶品パフェを堪能することができる。伊藤さんが訪れたのはちょうど桃の季節。もぎたての桃の甘みとみずみずしさに加え、「野性味」を感じる味わいに、桃の概念が変わったという。果樹園で収穫したてのものを食べるのは最高の贅沢だろう。

 旬のフルーツが手に入ったら、ぜひ自宅でフルーツを使ったシロップやジャムなどを手作りしたい。伊藤さんの毎年欠かさない初夏の手仕事が、1年分のあんずジャムを仕込むこと。パンやヨーグルト、チーズなどと共に、毎日の食卓を豊かにしてくれる一品だと話す。本書にはあんずジャムやイチゴシロップ、イチジクのコンポート、フルーツポンチなどのレシピも掲載されているので、作ってみてはいかがだろうか。どれもとても簡単で、季節を感じるものばかりだ。また、人気料理家に教わる絶品フルーツレシピやフルーツをめぐる台湾・バンコクの旅、おすすめのフルーツ手土産など、盛りだくさんの内容となっている。

 旬が短いフルーツは、季節の移り変わりを感じることができる貴重な食材。出始めはそのままフレッシュさを楽しみ、後はコンポートやジャムなどにして楽しむこともできる。また、デザートだけでなく、サラダや煮込みなどのアクセントとして料理に取り入れるのもいいだろう。フルーツは日々の生活を豊かにしてくれる名脇役といえる。

文=トキタリコ