殺人事件の約6割は家族間で起こる! もし「親を殺したい」と思ったら…?

暮らし

2019/8/13

『親を殺したくなったら読む本 「親に疲れた症候群」の治し方』(石蔵文信/マキノ出版)

「親を殺したくなったり、早く死んでほしいと思ったりしたことはありませんか?」

『親を殺したくなったら読む本 「親に疲れた症候群」の治し方』(マキノ出版)の著者であり医師の石蔵文信氏は、診察の際に患者にそう問いかけるという。

 今年6月、元農水省事務次官が息子を殺害したとして逮捕された事件や、中学受験生が刺殺された事件で、7月に被告人である父親に懲役13年の実刑判決が言い渡されたことはまだ記憶に新しい。警察庁の統計(「平成28年の犯罪情勢」)によると、平成28年における殺人事件の既遂検挙件数のうち、被疑者と被害者の関係が「親族」間である割合は、58.2%。実に6割近くの殺人事件が、家族同士のあいだで起こっているのだ。

 そして著者は、臨床を通じて感じたことから、世の中に警鐘を鳴らす。

“実際に殺人を犯すまでに至らなくても、親や子どもを殺したいと思うほどに家族の存在を重荷に感じている人や、家族問題に苦しみ疲れ果てた人が、ここ10年くらいで確実に増えている。”

「親を殺したい」「家族を殺したい」という気持ちを抱えて悩んでいるのは、決してあなただけではないのだ。

 著者が実施したアンケートによると、「親に対して『いなくなってしまえばいい』と思ったことはありますか?」という質問に「はい」と答えたのは、全体の37%──およそ3人に1人が、親に対して大きな不満を感じている。

 たとえば、かつての嫁姑問題に代わって現代の女性たちの大きなストレス源になっているのが「母娘問題」。アンケートからは、こんな声も聞こえてくる。

「私が50代になった現在でも、いまだに母は私の行動を監視したがります。『お母さんになんでも話して』といいますが、話したところで母から批判が返ってくるだけ。もううんざりで、コミュニケーションを取るのが嫌になります。『母が死ぬまで、あと数年の我慢!』と思い、母と闘うことは控えていますが、日々ストレスの嵐です」

 近年、30〜60代やその子世代に、親が原因だと考えられる心身の不調が増えているという。子どもの人生に悪影響を及ぼす「毒母」や、無自覚に精神的暴力をふるう「モラハラ父」、さらには老親の介護など、「親の存在」そのものが大きなストレスになっているのだ。

 親に対して「うっとうしい」「早く死んでくれ」と感じるのは事実だが、無下に扱うこともできず、親の希望や期待に答えようと無理をしつづけると、身も心も疲れ果ててしまう。こうした現象を、著者は「親に疲れた症候群」と名づけ、「愛情あふれる家族が理想だというのは幻想」「親を殺したくなるのは当たり前」だと医師の立場から説明し、わたしたちを励ましてくれる。

“子どもは、親を選んで生まれてくることはできない。だが、自分の人生は自分で選ぶことができる。そのことを忘れないでほしい。”

 今は家族関係が良好でも、親が年を取るにつれ、状況が変わることもあるという。問題が深刻化しがちな「親に疲れた症候群」はもちろんのこと、子どもの引きこもりや家庭内暴力、兄弟姉妹や親族との摩擦など、「家族を殺したい」と思ってしまったときに心が軽くなるヒントや解決策を、さまざまに紹介する本書。家族の問題を抱えているという人は、ひとりで悩まずにぜひ手に取ってみてほしい。

文=三田ゆき