和食コース料理の順番に物申す!? 作家・姫野カオルコ独特の視点で叩き斬る痛快食エッセイ

暮らし

2019/9/1

『何が「いただく」ぢゃ!』(姫野カオルコ/プレジデント社)

 巷には食にまつわるエッセイが数多く存在していて、私は食エッセイを見つけるとついつい手に取ってしまう。どうして食べ物の話にこうも惹かれてしまうのだろうと不思議に思うが、きっと「食べること=生きること」という人間の本能が関係しているのではないかと勝手に思っている。そんな数ある食エッセイの中でも、ひときわ異彩を放っていたのが『何が「いただく」ぢゃ!』(姫野カオルコ/プレジデント社)だ。本書は、常に食べ物のことを考えているという作家・姫野カオルコさんの独特な視点で綴られた痛快なエッセイとなっている。

 姫野さんは食べるのも好きだがお酒も大好きな「上戸(じょうご)」。酒飲みということで、食事をする際には「お酒に合う食べ物」という基準で食べるものを選ぶことが多いという。一方、お酒が飲めない下戸(げこ)にとっては、食事とお酒には何の関係もなく自然とごはんに合うおかずを選ぶことになるため、上戸と下戸では根本的に味の好みが異なるというのだ。そんな彼女が警鐘を鳴らすのが、メニューについている「女性に人気!」の表示。彼女曰く、飲食店における「女性」とはただ単に性別を表しているのではなく、暗に「お酒が飲めない人」「お酒がそれほど強くない人」を指していることが多いように感じるそうだ。そのため、お酒好きの女性が表示を鵜呑みにしてしまうと、お酒に合わない「はずれ料理」が出てくる確率が高いという。飲食店では、「女性に人気」を「下戸に人気」と変換すればそうそうはずれないというのが著者の意見だ。私も大の酒好きなので、この視点には大いに賛同することとなった。また、「女性に人気」と表示してあることで、お酒に弱い男性が注文しにくいのでは?という視点にも納得がいく。

 続いてもお酒についての話。飲食店で姫野さんが苦手なのが、お店に入ってすぐに聞かれる「お飲みもの、何になさいますか?」という質問だ。「まずはビールで」と答える人は多いかもしれないが、彼女は何を食べるか決めてから食事に合うお酒を選びたい派。行きつけのお店ならある程度メニューも把握しているので到着するまでに決めておけるが、行きつけではないお店ではそうはいかないのだ。そこで、お店の人には「お料理、何になさいますか?」とまずは聞いてもらいたいとエッセイで訴えている。この質問であれば、まずはビール派の人も「先にビールを」の一言だけで両派が満たされるのではないだろうかと。

 ただし、彼女の視点では、「まずはビール派」の人にとって残念なのが和食のコース料理だという。たいていの和食コースでは、小鉢・生もの・煮物・焼きもの・蒸しもの・揚げもの・ごはんと汁もの・水菓子の順に料理が出てくるが、最初に出てくる小鉢にはビールよりも日本酒が合うと指摘する(あくまでも彼女の好みでは)。そして、料理が進み揚げものなどになると今度はビールが合う。料理の順番を変えることはできないので、料理に合わせてお酒の順番を変えてみてはどうだろうかというのだ。まずはソフトドリンクで喉を潤し、小鉢や生ものなどに合わせて日本酒を、途中お酒を休んで揚げものでビールを注文する。ここには、炭酸のビールを食後酒にしてしまおうという思惑もある。空腹状態でいきなりお酒を胃におさめることもなく、実は理想的な順番なのではないかと納得した。もちろん、何はともあれまずビールという人には関係のない話だ。

 本書には他にも、タイトルと同名のエッセイ“何が「いただく」ぢゃ!”や、“『小さな恋のメロディ』のティータイム”“ざんねんな、おいしい場所”“かんずり礼賛”“サンマ・グラフィティ”など姫野節が炸裂した痛快エッセイが満載だ。ただおいしいものを羅列するエッセイとは異なり、思わず「そうそう!」と膝を打ちたくなる著者の視点が面白く、読み進める手が止まらなくなるだろう。また、著者がおすすめする簡単なレシピも掲載されているのでぜひ作ってみてもらいたい。もちろん、酒飲み用のレシピなのはいうまでもない。

文=トキタリコ