「夕方6時のチャイムが鳴ったら、外に出てはいけない」奇妙な迷信、破ったらどうなる?

マンガ

公開日:2019/9/8

『火葬場のない町に鐘が鳴る時』(和夏弘雨:漫画、碧海景:原案/講談社)

「あそこの川には“シバテン”がおる。悪い子のところに会いに来るよ」

 シバテン(芝天狗)とは私の生まれ故郷で言い伝えられている河童の妖怪で、幼少期はいつ現れるのだろうかといつもドキドキしていた。

 こんな風に、日本には土地ごとに残されてきた言い伝えや迷信が数多く存在する。科学的な根拠がないと分かっていても、つい気にしてしまう人も多いのではないだろうか。『火葬場のない町に鐘が鳴る時』(和夏弘雨:漫画、碧海景:原案/講談社)は、とある町に伝わる奇妙で恐ろしい習わしの物語だ。

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 舞台は、山あいにある人口6000人の小さな町、みとず町。10年振りに家族でこの町に戻ってきた卯月勇人(うづき・ゆうと)は、幼馴染である豊橋咲(とよはし・さき)との再会を心待ちにしていた。しかし、涙ながらの再会に胸を熱くしたのも束の間。夕方6時のチャイムが鳴ると彼女の様子が一変してしまう。勇人の手を引いて走りだした咲は、こわばった表情で「みとずの秘密」を語り始めた。

“アンタがこの町から出た後ひとつ…とても大きな変化があったの”
“夕方6時を過ぎると町には不思議な鐘(チャイム)が鳴る。その音を聞いたら夜明けまで絶対外へ出てはいけない”

 咲の話によると、夕方6時を過ぎて外にいる住民たちを三途州山に住む妖怪「冥奴様(めいどさま)」がさらいにくるのだそう。にわかには信じがたい話を頭の中で整理しながら走っていると、突然町中に大きな鐘の音が響き渡る。あまりの衝撃に勇人は耳を塞ぎ、立ち止まってしまった。まだ彼は気付いていないのだ。脳内に不快感と嫌悪感が充満するような不協和音と共に、“ヤツ”がやってきてしまったことを――。

 タイトルにあるとおり、みとず町には火葬場がない。死者を土葬するのが長年の習わしであり、火葬は冥奴様の怒りに触れることだと言い伝えられてきたのだ。しかし、半年ほど前に決められた火葬の義務化によって、みとず町を取り巻く環境はガラリと変化してしまった。

 住民たちを日々恐怖に陥れる不条理な掟にも町の状況の変化が関係しているのだろうか。説明の付かない非科学的な現象はいたずらに人々の心理を乱す。「迷信×サスペンスホラー」の本作で、怪しき日本古来の恐怖に触れてみては?

文=山本杏奈