リアル子育てと理想のギャップに「思ってたんと違う!!」 日本全国のママの共感を呼んだ子育て絵日記

出産・子育て

公開日:2019/9/11

『子供ができて知ったこと』(むぴー/扶桑社)

 暑さが和らぎ秋の気配が感じられるようになったと思ったら、台風や不安定な天候の影響で、楽しみにしていた家族とのお出かけの予定が崩れてしまうことも…。そんなときこそハートフルな家族についての本を手にとり、心を満たしてみてはいかがでしょうか。『子供ができて知ったこと』(むぴー/扶桑社)は、育児の大変さを美化せずにありのまま描くからこそ、ついつい涙腺がゆるんでしまうイラストエッセイ。

 作者のむぴーさんはやんちゃな3歳男児とおてんばな1歳女児をもつママ。本作はTwitter上で更新していた「#むぴーの絵日記」にアップされた作品を1冊にまとめたもの。17万いいねを記録した「子供ができて知ったこと」をはじめ、ほのぼのイラストエッセイには、子供たちのかわいさはもちろんのこと、理想通りにはいかずイライラやモヤモヤがたまりがちな育児の難しさについても率直に描かれており、多くのママたちの共感を集めています。

 理想とはちょっと違う形だけれど、やっぱり子供と過ごす日々は他に代えられない宝物――。本作を目にすると、そんな温かい気持ちになり、当たり前の日常が少し眩しく見えてきそうです。

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■思ってたんと違う! 理想とは違う「子供の生態」

 大好きな人との間に産まれた子供と毎日一緒に過ごせたら、どんなに幸せだろう…、そう夢見る(夢見た)女性は多いはず。むぴーさんもそのひとりで、小さな頃から“お母さんになること”には強い憧れを抱いていたそう。

 しかし、実際に母親となって我が子の生態に触れると、「思ってたんと違う!」という衝撃が湧きあがってくることが多かったよう。例えば、抱っこひとつとってみても、大人しく抱かれていてほしいという大人都合の願望の儚さを実感。

 子供は楽しそうだけれど傍から見るとシュールでちょっと恐ろしい遊びに違和感をもったり、大人の意図をまったく無視する子供のテンションに突っ込みたくなるようなこともあります。

 育児をしてみると思い通りにいかないことのほうが大半で、主導権を握っている子供に親が疲労困憊させられることの連続。しかし、どんなに振り回されても、どんなに大変な思いをしても、我が子が幸せそうに笑ってくれたらそれだけで幸せだと思える…。むぴーさんのシンプルなイラストからは、そんな親心が溢れ出てきます。

 子供ができて一番深く知らされること――それはもしかしたら、「ただの日常」の中にも大きな幸せがたくさん潜んでいるということなのかもしれません。

■子育ての正解を求めるより、親でいる「今」に感謝したい

 自力でできることが少しずつ増えていく我が子――そんなたのもしい姿に、うれしさと同時にちょっと寂しさを抱いてしまうのも、「親あるある」。本作にはそんな複雑に揺れ動く(?)親心も、リアルに描かれています。

 他の人から見ればなんでもないような光景にも親は感動し、言葉で表せない感情が胸に湧き起こってきます。

 そして、そんな日常の感情を振り返っていると、自分の子供時代の記憶もまた蘇り、“両親から貰った愛”を改めて意識し、この気持ちを我が子にも伝えられたら、と思わずにはいられなくなります。

 子育てに必死になっていると、つい他の子供と我が子の成長を比べて、悩んでしまうこともあるでしょう。実際、むぴーさんも息子さんが2歳半のときに発語能力が1年ほど遅れていることを知ったとき、自分の子育ては正解だったのかと悩んだそう。

 しかし、確実に成長している息子さんが胸の内で考えているであろうことに耳を傾けていく中で、気持ちはほぐれて変化していきます。自分の子育て法は正しいのかという悩みは今でも尽きませんが、そのことよりも「この子たちの親になれてよかった」という気持ちを強く感じるそうです。

 喧嘩がなくて、我が家はいつもキレイで、家族はいつでも穏やかで…そんな家庭に誰でも憧れます。でも、飽きずに兄弟喧嘩をしていたり、叱っても片づけないおもちゃや食べカスが散らばっているような「私の家」にも幸せは溢れている――そう思える本作は、楽しいときだけでなく、子育てに疲れた際や子供との向き合い方が分からなくなったときにもそっと寄り添ってくれる1冊です。

文=古川諭香